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「目の病気って治るの?」(2010年9月14日掲載)

仲吉 出・なかよし眼科

検診活用し視る機能改善

「目の病気って治る?」  眼科医としてよく聞かれる質問ですが、非常に返答が難しいものです。誤解を恐れず言いますと、目の病気は治りません。実は、目の病気の種類は意外と多く、その大部分は病気になってしまうと、それ以前の正常な状態へ戻ることが非常に少ないのです。

しかし、「視(み)る」という機能に関しては、治療により良くなるものがあります。その代表は、年とともに徐々に視力が低下していく加齢性白内障です。目の構造からは、光の通り道の病気といえます。白内障手術が成功すると、劇的に視力は改善するため大変喜ばれる治療です。ただし、ほかの目の病気を合併している場合は、正常域まで視力の改善はみられないことがあります。

とはいえ、適切な時期に治療することで手術前より矯正視力(適切な眼鏡を使っての視力)は改善するため、実際に治療を受けられた方は「手術して良くなった」という印象を持たれるようです。そういう意味では「治る」と表現できる病気といえます。ところが、このように短期間で視力が改善する目の病気は非常に種類が少ないのです。

実は、「治る」目の病気は種類が限られており、「治らない」病気の種類は非常に多いのです。その代表として、中途失明する上位の疾患には緑内障、糖尿病網膜症、網膜色素変性症、黄斑変性症があります。これらすべてに共通することは、目の構造上、入ってきた光を脳へ伝える受信機の役割を担う、網膜の病気であるということです。

その繊細で緻密(ちみつ)な構造のため、一度失われた機能は正常な状態へ回復することはありません。しかし、「視る」機能を改善、維持、または悪化を最小限に抑えることは可能です。それこそがわれわれ眼科医の使命でもあるのですが、これまで積極的な治療は難しかったものも、改善が図れるようになっています。

手術機器、手技の進歩は目覚ましく、遺伝子治療は多様性をもって研究が進められており、再生医療はこれまでの医療のあり方を根本から変革する可能性を感じます。ただし、長期間悪化した病気は治療効果も限られているのが現状です。来る最新の医療を受けるためにも、現在の医療の中で、悪化を食い止める必要があります。

それ以前に、早期発見、適切な時期に治療を受けることが最も大切です。眼科を受診することが望ましいのですが、住民健診や人間ドックなどにある、眼底写真の検査を受けることで、網膜の病気、特に中途失明上位の病気は、眼科受診が必要かどうか分かります。自覚症状が出てからでは遅いことが多いため、検診を積極的に受けましょう。