骨粗鬆症(こつそしょうしょう)が検診に取り入れられ一般に認知されるようになっておりますが、骨塩定量検査で骨密度は正常値なのに、(脊椎(せきつい))椎体骨折が起こることがあります。ご本人にとっては「検診で骨密度は異常なかったのになぜ?」という疑問がでてくるでしょう。
この椎体骨折の半数以上は転倒など外傷のきっかけがない、骨折がいつ起こったか不明な不顕性骨折で、痛みを伴わないこともしばしばあります。知らない間に徐々に徐々に背骨がつぶれてくるのです。
骨の強さには骨密度だけではなく骨質も関係(骨強度=骨密度+骨質)しております。
骨質というのは骨のしなやかさのことであり、若木と老木をイメージしていただければ分かりやすいと思われます。どうも背骨の強さには骨密度もさることながら骨質が重要な要素であることが分かってきました。骨質が悪いと円柱形をした背骨がしなやかさを失い徐々にたわむようにつぶれてくるのです。
椎体骨折が起こり背中が丸くなったり(円背)、背中の痛みや筋力の低下が起こると身体バランス機能が悪くなり、転倒しやすくなったりします。また円背になると、腹部が圧迫され、呼吸機能や消化管機能も悪くなります。
ご老人が転倒すれば大腿(だいたい)骨骨折やさらなる脊椎骨折が起こり、負の連鎖が始まります。一つの脊椎椎体骨折が起こると他の部位の椎体骨折が起こる確率は5倍になり、また椎体骨折を起こした人は死亡率が8倍にもなるともいわれています。
この椎体骨折、予防が最も大事であります。それは骨密度と骨質の両方を考えた予防です。運動療法、栄養療法が基本であり、必要に応じて薬物投与を行います。
骨質の劣化はコラーゲンの劣化が関係しているので、喫煙や食生活を見直し、生活習慣病(糖尿病、動脈硬化症など)を予防、治療することが大事です。
高齢者では食事からの摂取不足、日光暴露不足によりビタミンDが不足していることが多く、ビタミンDを充足させることも骨質の改善につながります。
また骨粗鬆症の予防には、カルシウムやビタミンD以外にタンパク質、ビタミンK、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、葉酸なども併せて摂取することが大切です。
薬物治療に関しては現在の薬以外に今後新薬が期待され、予防治療がさらに進むと思われます。
楽しい人生を送るために、予防できることは予防しておきましょう。詳しいことはお近くの医療機関を受診して相談してください。