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カラオケポリープ(2010年8月17日掲載)

平良 章・にしはら耳鼻咽喉科

声帯に無理をさせない

1970年代半ばに登場したカラオケは、今では誰もが気軽に楽しめる国民的な娯楽の一つになりました。一方、普及し過ぎたためにカラオケが原因の声帯ポリープの患者が増えて問題視され「カラオケポリープ」という別名まで付けられるようになりました。

声は喉(のど)の奥にある声帯という筋肉と粘膜から成る2本の帯が触れ合って振動することで生まれます。その振動数は普通の会話でも毎秒100回以上にもなります。歌うときは声帯がさらに激しく高速で振動するので声帯の状態や歌い方によっては粘膜下の毛細血管が傷ついて破れ、その時の血豆が元で声帯ポリープができてしまうことがあります。2本の声帯の間にポリープが挟まりすき間ができるので声がかすれるのです。

それではカラオケポリープを予防するにはどうすればいいのでしょうか。それは声帯に無理をさせないということに尽きます。

風邪気味で喉が痛いとき、仕事で声を使い過ぎて喉の調子が悪いときなどは声帯が既に傷んでいるわけですからカラオケは避けるべきでしょう。また、カラオケ用の部屋はエアコンの影響で空気が乾燥しているので声帯も乾燥しがちです。乾燥した声帯粘膜同士が擦れ合い、ただでさえ傷めやすい環境下で歌うわけですから、声帯をさらに刺激する喫煙は控えた方が良いでしょう。

水分補給は大切ですが、アルコール類はたくさん飲むと声帯の充血が強くなり逆効果ですからほどほどにしてください。ソフトドリンクか水が良いと思います。

また、いきなり大声を出すとやはり声帯を傷めやすいので、初めのうちは静かな曲を静かに歌うのが良いと思います。声帯にも準備運動が必要なのです。何曲も続けて歌うとか、無理に高いキーで歌うというのは禁物です。キーは終始自分の声域内で調節してください。

以上の点に注意を払っても傷めてしまうこともあるでしょう。カラオケの翌日声がれを自覚したらどうするか。残念ながら特効薬は無いので、なるべく声を出さないようにして声帯の安静を保つことです。それで数日中に声が元に戻れば心配いりません。

声の制限の有無にかかわらず声がれが1週間以上続く場合は既にポリープができている可能性があります。その場合手術を必要とすることもあるので、耳鼻咽喉(いんこう)科で診てもらいましょう。特に愛煙家の場合、喉頭がんによる声がれの可能性があるので早めに受診してください。

カラオケ愛好家の皆さん、自分の声帯をいたわりながら長く上手にカラオケライフを楽しんでください。