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肩がよく脱臼する方へ(2010年7月27日掲載)

福嶺 紀明・豊見城中央病院

原因損傷に合った治療を

「肩が外れた〜!」と言って救急外来を受診したり、救急車で搬送されてくる患者さんが多く見られます。その患者さんの多くは、数回脱臼を繰り返して、脱臼するたびに救急外来を受診しています。丁寧に脱臼を整復して帰宅させても、また同じように脱臼して再度受診する…。よくよく聞くと、脱臼とまではいかなくても、常に脱臼する恐怖におびえながら生活している方がほとんどです。

肩関節疾患の患者さんを多く診ていると、何度も脱臼・亜脱臼を繰り返すことにより、日常生活だけでなく仕事(特に重労働、頭上での作業が多い仕事)の方やスポーツ活動に制限をきたし、大切なイベントや、スポーツの試合を棒に振るといったことがよく見られます。

スポーツの競技種目別では柔道やラグビーなどのコンタクトスポーツで受傷することが多く、そのほかではボールを投げる動作やバレーボールのスパイク、テニスのサーブ動作時によく起こります。一般の若い女性でも、もともと関節が柔らかい人では寝返りやくしゃみ、背伸び、着替えなどのごく軽い動作で脱臼する方もいます。ここまでくると、「反復性肩関節脱臼」「肩関節不安定症」といった病名がつき、ひどい人では、20代でも50回以上の脱臼歴があり、骨がボロボロに変形してしまった人もいます。

さて、そもそもなぜ肩は脱臼するのでしょうか? 肩関節は、上腕骨と肩甲骨の骨以外に、関節包、靭帯(じんたい)、関節唇、腱板(けんばん)といった部品から構成されています。脱臼した際、骨だけではなく、骨以外の部品も損傷されます。これらの中で特に脱臼を防止する役割の部品(靭帯や関節唇の一体化した部分)は一度損傷されると自然治癒しにくいようです。脱臼を防止する部品が壊れてしまうと、脱臼を何回も繰り返してしまいます。特に、10代から20代にかけては一度脱臼してしまうと、その後の人生で再度脱臼する確率が80%以上という報告もあります。

壊れた部品を治療するために、一昔前は、大きな傷(10〜15センチ)で手術する方法が主流でしたが、現在は小さな傷(1センチ×3カ所)で内視鏡を使用した手術方法が主流です。

2回以上脱臼した経験がある方や、1回脱臼したあと「肩が外れそう…」といった症状がある方は一度、肩関節専門の外来を受診して、どの部品が壊れているのかを検査した上で、治療方針を決めた方がよいかもしれません。

長く苦しんだ脱臼や脱臼不安感から解放され、快適な生活に早く戻れるかもしれません。