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健康食品(2010年7月13日掲載)

本村 和久・県立中部病院

“思いこみ”には要注意

「ちゃーがんじゅう」でいたいのは、誰もが思う願いでしょう。新聞広告やテレビコマーシャル、インターネットを見ると、常に健康に関する言葉が躍っています。「長年苦しんできた痛みが××でよくなった」「○○で肝臓の機能が改善」などです。体験談も豊富に書いてあり、医師の私が、「そんなに効くなら試してみたい」と思わせるものばかりですが、本当に効果があるのでしょうか。健康食品について、ちょっと冷静に考えてみましょう。

医師が処方する薬でも同じですが、効く人と効かない人が必ずいます。人それぞれで、体質は異なっており、体に入ったものがどう効くのかも人によって異なります。もともとの体調や健康状態にも左右されます。ご近所の○○さんに効いたものが、自分に効くかどうかは分かりません。「飲めば効く」と思い込むのは要注意です。

「飲んで効いた」が本当にそのものの効果なのか、勝手に治ったのか、実は難しい問題です。プラセボ効果といって、本物の薬の代わりにプラセボ(偽薬)を投与すると、薬の有効成分を飲んでいないのに、症状がよくなることがあるからです。厳密には、有効成分の入っていないものと入っているものを飲む人に分からないように、複数の人に割り当てて、飲んでもらう比較試験を行わないと効果は判定できませんが、健康食品でこの比較試験が行われているものは、ほとんどありません。

副作用にも要注意です。お酒の飲み過ぎで肝臓の血液検査がちょっと悪いと指摘された人が、肝臓によいとされる健康食品を飲み始めて、肝臓の血液検査が正常の100倍以上に跳ね上がり、緊急入院となったこともありました。食品から作られた安全といわれている健康食品でも、成分の濃いものを取り続けると思わぬ副作用があります。また「天然成分」だから大丈夫ではありません。天然に存在する毒性のある物質はたくさんあります。また、薬を飲んでいる人は、健康食品との飲み合わせについて、ぜひ医師と相談してください。

飲んで効いていて、副作用もないのなら、健康食品を続けるのは構わないと思いますが、払っている費用と実際の効果について考える必要もあると思います。

沖縄の元気な高齢者を見て思うのですが、「ちゃーがんじゅう」への道は、「飲めば効く○○」という近道ではなく、規則正しい生活、バランスのとれた食事、適度な運動といった地道なところにありそうです。