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栄養サポートチーム(NST)(2010年7月6日掲載)

石原 淳・中頭病院

チーム医療で補給を管理

病院には、医師や看護師以外にも数多くの職種の人が勤務しています。その多職種の面々がチームを組んで患者さんの栄養≠ノついて考えるチーム、それが栄養サポートチームNST(Nutrition Support Team)です。医師、看護師、管理栄養士、薬剤師、臨床検査技師、リハビリテーションスタッフ、歯科衛生士、事務職員らがメンバーになります。NSTは、知っておいて損はない言葉です。

患者さんが入院するとまず、看護師が問診で食欲低下や吐き気、下痢、体重増減、むくみの有無などをチェックします。そして身長体重の測定、血液検査データも含めて管理栄養士に伝え主治医と共に入院栄養計画書を作成します。必要なカロリー、タンパク質の量などを決めるのです。食事が摂(と)れない場合は、医師が点滴の指示を出します。薬剤師は、薬全般を管理します。

軽症の患者さんは、薬と点滴で回復し食事ができるようになりますが、1週間以上も十分な食事が摂れず、このままでは、手足が痩(や)せてきていろいろな合併症が起こるであろうと予想される患者さんには、NSTがかかわります。

栄養不良の患者さんについてNSTメンバーが全員で知恵を出し話し合って、栄養補給の方法は、食事だけでよいか? 栄養剤の追加が必要か? 鼻から管を入れて栄養剤を注入すべきか? 長期に食べられない場合は、胃に栄養を注入する管(胃瘻(いろう))を入れるべきか? 点滴の量や種類を変更すべきか? 食べるとむせる患者さんの場合は、言語聴覚士が飲み込む能力が十分かテストし訓練します。口の中が不潔で傷などがあるときは、歯科衛生士が処置します。事務職員は、コンピューターで栄養データ処理をします。

このようなチーム医療での栄養管理を行ったにもかかわらず、回復しない患者さんについては、何度でも話し合いや回診を行い打開策がないかどうか検討します。また、栄養管理と同時にリハビリテーションを行い筋力の低下を防ぎます。このように、多職種による栄養管理を行うのがNSTです。

10年前までは、日本の病院にほとんどありませんでしたが、今では、全国1500以上もの病院に普及しています。栄養管理を行うことで合併症が減り医療費も抑制できることが分かってきたからです。病は、薬や手術だけで治せるものではありません。栄養こそが真の「命ぐすい」なのです。入院したらぜひ尋ねてください、「NSTありますか?」と。