沖縄県医師会 > 健康の話 > 命ぐすい・耳ぐすい > 命ぐすい・耳ぐすい2010年掲載分 > 内耳障害

内耳障害(2010年6月29日掲載)

真栄田 宗慶・アメカル耳鼻科クリニック

首の骨との密接な関係

コールセンターなどの電話応対の多い職業に勤務されていて、めまいや耳鳴りを訴えて来院される患者さんが、最近多く見受けられます。こちらが一言、二言説明する間にも5、6回は相槌(あいづち)を打っていらっしゃいます。おそらく、勤務中は何百回となく相槌を打っているのではないでしょうか。当然、内耳にある三半規管も何百回となく振られ続けていることになります。

体のバランスをつかさどる三半規管と、聴覚をつかさどる蝸牛(かぎゅう)管は、両方合わせて内耳と称し、内部は脳脊髄(せきずい)液と同じ内リンパ液でつながっており、強い振動や長時間の振動に弱く、長年にわたる騒音や、事故などの頭部衝撃で内耳を損傷することもあります。Head Shaking(頭振り)テストといって、めまいを誘発させる検査もあるぐらいです。首の振動マッサージを長時間続けて、具合が悪くなった方もいます。適度の時間内でとどめることが肝心です。

首の骨(頚椎(けいつい))と内耳は密接に関係しており、内耳の血管は、頚椎にある骨の穴(椎管孔)を縦走する椎骨動脈のみから血液が供給されます。心臓から頚部を通過して脳に向かう太い動脈を道路に例えるなら、頚動脈が国道58号線で、椎骨動脈はバイパス(330号線)に相当します。

頚動脈は頭蓋(ずがい)骨に入るまでは、軟らかい組織の間を通りますが、椎骨動脈は硬い骨の間を縦に貫き、頭蓋内に入るまで合流はありません。そのため頚椎に変形やズレがあったり、首の振動などの刺激で動脈が収縮すると、内耳の血液循環が悪くなり、めまいや耳鳴りを誘発する可能性があります。

現在はMRI(磁気共鳴画像装置)画像のコンピューター処理で、造影剤を注射しなくても太めの血管が写し出せるようになり(MRA)、椎骨動脈の大まかな血流状態が分かるようになりました。ただ検査には高性能のMRI機器が必要で、技師が画像処理するのに手間暇がかかるため、限られた病院でしか検査できません。

さて、姿勢が悪いと相対的に頭も傾き、頚部が圧迫気味になり内耳に影響します。姿勢のズレを簡単に確認するには、鏡の前で目を閉じた状態で、肩の高さまで両手を前に上げ、指先の高さに差がないか確認したり、自然に座った状態で、どちらかの肩が下がっていないか、家族に確認してもらうとよいでしょう。首を回す運動をする際も、強くグリングリンと回すのではなく、首の骨の間を血管が通っているぞと意識しながら、ゆっくりとほぐすようにしてください。