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高齢者の心臓手術(2010年6月15日掲載)

熊野 浩・北部地区医師会附属病院心臓血管センター

全身状態良いと術後順調

日本は世界でも1、2位を争う高齢化国となり、2008年の日本人の平均寿命は男性が79歳、女性で86歳となっているそうです。

医療の進歩により、外科系のどの分野でも一昔前には考えられなかった80歳以上の超″wの方が手術を受けることが多くなりました。私が専門とする心臓外科の分野でも80歳代や中には90歳代の方が手術を受けることが増えていますが、そのような方々が手術後にお元気になって外来でお会いすることは外科医冥(みょう)利(り)に尽きるといえるでしょう。

心臓の病気には、現状では手術でしか治すことができないものもありますが、高齢の患者さんに病状や手術の必要性をお話しすると、ご本人やご家族から「もう年だから…」とか「手術に耐える身体でしょうか?」などといった言葉がよく聞かれます。確かに手術、ましてや心臓の手術ともなると、「怖い…」「年をとって今更…」「体力がもつかどうか…」などと心配されるのは当然です。

心臓外科手術は全身麻酔の手術となる上に、ほかの分野の手術と異なり一時的に心臓を止めて心臓の代わりに血液を全身に循環させるための装置(人工心肺)を使用します。このため手術侵襲(手術による身体へのストレス)が大きくなる傾向があります。また、人工心肺の影響によりまれにほかの重要臓器(脳・肺・肝臓・腎臓など)に合併症を起こすこともあります。このため手術前には心臓の病状はもちろんのこと、全身の状態を詳しく検査をする必要があります。

検査の結果、手術が必要な病状であり全身状態が手術に耐えると判断された場合には、患者さんやご家族に手術を勧めることになります。また、経験的には単なる実年齢よりは患者さんの見た目の元気さ≠熄d要です。特に「長寿県」の沖縄県では80歳を超えても畑仕事などをして元気に過ごされている方も多く、このような方々は手術前の検査でも心臓の病気以外はあまり問題がなく、手術後も順調に経過することが多いです。

高齢でも手術を勧められた患者さんは自分の体力に自信を持って下さい! 「年だから手術はやめておこう」ではなく「年だから手術で病気を治すラストチャンス」と考えてはどうでしょうか?

とはいえ、手術には一定の危険が伴いますし、手術を受けるかどうかはやはり最終的には患者さんご本人(あるいはご家族を含めて)が決めることです。担当の先生の説明をよく聞かれて、十分に納得してから手術を受けることが最も大切です。