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自己血輸血(2010年6月8日掲載)

新垣 宜貞・南部徳洲会病院

献血使用量減りより安全

皆さん、「自己血輸血」ということを聞いたことがありますか? 自己血輸血とは自分の血液をあらかじめ保存しておいて、手術の際に使用することです。

大きな手術を受ける際には出血が多くなり、どうしても輸血が必要になります。同種輸血(献血してもらった他人の血液を輸血すること)の安全性はかなり高くなり、ほとんど副作用なく輸血できると考えられていますが、輸血後感染症やGVHD(移植片対宿主病)などの予想できない合併症を100%回避できるわけではありません。そのような危険性がなく、より安全に輸血できるのが自己血輸血です。

また自己血輸血には血液製剤の適正使用となる面もあります。近年、輸血用血液の需要は増加傾向にあり、現在でも血液使用量に対して供給量は少ないのですが、2025年での需給予測では使用量に対する供給量は62・5%まで低下することが予想されております。自己血輸血ではあらかじめ自分の血液を保存しておいて、手術の際に使用するわけですから献血した血液の使用頻度を減らせる効果があるわけです。

しかし、全部の患者さんが自己血輸血ができるわけではありません。自己血輸血が可能な患者さんは(1)緊急を要しない待機手術の患者さん(2)事前に輸血が必要となることが分かっている患者さん(3)まれな血液型や不規則抗体がある患者さん(4)自己血輸血の利点を理解して協力できる患者さん―に対して行われます。

もともと貧血のある患者さんでも、貧血の程度により造血剤などの薬剤を併用しながら自己血輸血を行うことが可能な場合がありますので希望する方は担当の医師と相談してください。

自己血輸血で採血する血液量は手術時に予想される出血量で決まりますが、大体400〜800ミリリットルを採血して保存することが多く、ときに1200ミリリットル準備する場合もあります。採血するのは1週間に1度、400ミリリットルずつ採血して保存し、手術1週間前までに準備します。800ミリリットル準備する場合は手術3週間前と2週間前に400ミリリットルずつ採血・保存し、手術時に使用することになります=図。採取した血液の保存期間は5週間ですので、手術が延期になった場合でも5週間以内であれば使用は可能です。

患者さんに対して輸血が必要な場合、同種輸血および自己血輸血の両方について説明し選択してもらうのですが、ほとんどの患者さんが安全性の面から自己血輸血を選択されます。血液製剤も資源の一つであり、その有効利用を図るため、また、より安全な治療を行っていくためにも自己血輸血を推進していくことが望まれます。