沖縄県医師会 > 健康の話 > 命ぐすい・耳ぐすい > 命ぐすい・耳ぐすい2010年掲載分 > 子宮頸がんと予防ワクチン

子宮頸がんと予防ワクチン(2010年6月1日掲載)

長井 裕・琉球大学大学院医学研究科 女性・生殖医学講座

先進国の多くで接種助成

子宮の入り口におこる子宮頸(けい)がん(頸がん)は、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染を原因とする「がん」で、日本で毎年約1万5000人(上皮内がん含む)が発生し、約3500人が亡くなっています。

HPVは、女性の約70%が一度は感染するありふれたウイルスです。多くは性交渉で感染するとされていますが、たとえ感染しても、およそ90%は自分の免疫で感染が取り除かれます。が、取り除かれず感染が続く場合に、前がん病変が発生し、一部が上皮内がん、微小浸潤がん、浸潤がんと進みます。

さて、予防ワクチンが昨年秋に本邦で承認されました。HPVには100種類以上の型があり、約15種類の型が頸がんの原因とされています。このワクチンは頸がんの原因として多いHPV16型と18型の感染予防をします。接種推奨年齢は、性交渉経験者が急激に増加する前の11〜14歳の女児が第一推奨年齢であり、第二推奨年齢は15歳以上となっています。性交渉のある方でも、未感染HPVの感染予防ができるので接種は意義があります。

大切なことですが、予防ワクチンではすべてのHPV型をカバーしていないため(約70%)、従来通りの検診を定期的に受診することが必要です。

現在、このワクチンは「任意接種」であり、3回の接種で約5万円が必要です。多くの方が、この費用を安いとは思われないはずです。日本以外の先進国のほとんどで、このワクチンは、国(州)の政策等によって公費で接種できるようになっています。先日、「栃木県大田原市で、小学6年女児を対象にした頸がん予防ワクチンの集団接種が始まった。同ワクチンの集団接種は全国で初めて。接種は任意だが、費用は市が全額負担する」と報道されました。

また、「子宮頸がん征圧をめざす専門家会議」の調査で、全国32市区町村がワクチン接種の公費助成を決めているとのことです。『…HPVワクチンの日本での開発を推進し、任意接種に対する助成制度を創設します』これは、現政権与党の医療政策集の一文です。

また、本年3月3日の第11回厚生労働省政策会議議事要旨には、「わが国で何故ワクチン接種が有料なのかというと、現状では検診を含め、予防医療を健康保険で扱っていないからであり、これがある意味ハードルとなっている。癌(がん)の検診率を含め、大きな枠組みの中で考えていくべきである」とあります(4月18日アクセス)。真に、日本が女性に優しい国になることを切に希望している今日このごろです。