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便通異常について(2010年5月25日掲載)

宮城 聡・愛和ファミリークリニック

恥ずかしがらずに相談を

昔から「快眠、快食、快便」がそろえば健康であるといわれ、睡眠と食事、便通には一人一人の健康状態が反映されます。代表的な消化器症状としては、腹痛、便通異常が挙げられます。便通異常とは、下痢や便秘といった症状を示します。これらの症状の疾患には、急性腸炎、大腸がん等の腫瘍(しゅよう)性疾患、潰瘍(かいよう)性大腸炎やクローン病に代表される慢性炎症性疾患、最近のストレス社会を反映して増えてきている過敏性腸症候群など、疾患は多岐にわたります。

まず、下痢とは水分量が多く、お粥(かゆ)状や水のような便を頻回に排泄(はいせつ)することをいいます。その発症の期間により急性と慢性に大別され、また、発症メカニズムにより、(1)滲出(しんしゅつ)性:炎症により腸粘膜傷害を背景に腸粘膜からの水分が増加する(2)浸透圧性:濃度の濃い食事や成分栄養剤を短時間に大量に服用した場合(3)腸管運動亢進(こうしん)による下痢(4)消化吸収障害による下痢―に区別されます。下痢により体重減少がみられる場合や、発熱・発疹(ほっしん)・腹痛などの症状を伴う場合は要注意です。下痢の際には、体内から水分が失われるので、水分補給を心がけることが肝要です。

次に、便秘は週2日以下しか排便しない状態をいいます。原因として、(1)器質性:腸管そのものの異常によるもの(2)機能性:腸管運動機能異常によるもの―に区別されます。

器質性便秘は腸管内の腫瘍や異物、未消化物、腸管のねじれにより便の通り道がふさがってしまうことが原因となります。また、腸管以外の腫瘍(子宮がんや前立腺がん)が圧迫し、便が通りにくくなることもあります。機能性便秘には痙攣(けいれん)性(腸管運動亢進)、弛緩(しかん)性(腸管運動低下)、直腸型便秘(脊髄(せきずい)損傷による排便機能異常)があります。ほかに、糖尿病や薬物(向精神薬等)によるものがあります。排便のリズムは人それぞれですが、1週間以上排便がなければ明らかに異常です。

さらに、便の性状に関して、便が細くなっている場合や便の色調が暗赤色や黒褐色である場合には、早めの医療機関受診を勧めます。胃腸は「考える臓器」であり、ストレスの影響を受けやすく、便は「健康のバロメーター」です。恥ずかしがらずに相談されることを勧めます。

最後に、6月12日(午後2時40分〜4時40分)に沖縄コンベンションセンターにて日本消化器がん検診学会行事として市民公開講座『進んで受けようがん検診―がんなんて怖くない』(入場無料)を開講しますので、参加されてはどうでしょうか。