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肛門疾患(2010年4月20日掲載)

徳嶺 章夫・あさと大腸・肛門クリニック

痔の症状 生活改善で軽減

「手術しないでいいんですか!? 良かったぁ〜!」

肛門(こうもん)科にかかわってもう15年になります。外来で患者さんに病状を説明するときに、こんな場面も少なくありません。いわゆる「痔(じ)」には、必ずしも手術が必要ではないものも多く、手術が必要でないことを話すと、ずいぶんと喜ばれたりします。

たとえば「痔」で最もポピュラーな「イボ痔」といわれる痔核(じかく)も、実は「生活習慣病」ともいえる病気で、習慣の改善で悪化を防いだり、改善したりすることは可能ですし、さらに進行した状態でも、最近では注射治療なども普及してきました。もちろん手術が必要な状態もありますが、「良い外科医とは手術を回避することができる外科医」と学生時代教えられたことを心掛け、面倒でもいろいろな方法があると説明することにしています。

例えば例年、年末や年度末前後になると増加する「血栓性外痔核」などは、ほとんど手術する必要のない「イボ痔」の代表です。睡眠不足や、冷え、スポーツなどで体が疲れているとき、睡眠中に血流が悪くなって発生することが多く、「朝起きたら違和感があって、昼すぎに出ていることに気づいたんです、押し込もうとしても痛くて戻りません」と訴えてやって来る方が多い「イボ痔」で、肛門の入り口近くにできるため、患者さんは「脱出してきた!」と思いこんで押し込もうとするため、痛みがかえって増強して昼すぎに受診するのがほとんどです。

マラソンやゴルフなど寒い時季も屋外で行うスポーツや、忘年会、新年会や歓送迎会での暴飲暴食、睡眠不足、残業などで忙しい時期に増える病気ですが、体を休めてゆっくり入浴したり、カイロで温めたりして血流を改善すれば治っていきます。なかなかしぼまない場合や痛みが強い場合だけは「日帰り手術」が必要になることもありますが、通常は、治るまで炎症や痛みを抑え、焦らず治癒を待っていれば良いわけです。

また肛門疾患の6〜7割を占める内痔核に対して、県内の企業が中心となって開発された注射剤が全国的に脚光を浴びています。タイプにより行えない例もありますが、痛みは少なく、治療時間も20〜30分程度で済む画期的な方法で、治療後生活習慣に気をつけていけば手術と同等の効果が期待できる治療です。

「病院に行ったら切られるよう〜」と脅かされてひそかに自分で薬を買い込むより、手術をしないで治す方法も多い訳ですから、専門家を上手に利用した方がいいと思います。