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ストレスと難聴(2010年4月13日掲載)

玉城 三七夫・たまき耳鼻咽喉科クリニック

「耳が詰まった感」注意

ある日突然、「耳が詰まった」感じがして、何か頭もスッキリしない…このような経験をしたことがありませんか?

もしかすると、それは「急性低音障害型感音難聴」という耳の病気かもしれません。

ずいぶん長い名前の病気ですが、読んで字のごとく、「急性」におこった「低音域」の「難聴」です。難聴といっても、全く聞こえないというほどの強い症状ではなく、耳が詰まった感じ≠ニか音が歪(ゆが)んで聞こえる≠ネどの症状がでます。通常は片一方の耳だけ悪くなるため会話にはあまり不自由はなく、精密な聴力検査を受けないとはっきりとした異常が見つかりません。「耳が詰まった感じ」が続く場合は、耳鼻咽喉(いんこう)科での聴力検査をお勧めします。聴力の異常が認められれば、安静を指示され、ステロイドなどの薬が処方される場合もあります。

「急性低音障害型感音難聴」は、比較的短期間に治りやすいことが特徴なのですが、中には再発を繰り返し、「メニエール病」へ移行することもあります。「メニエール病」はめまい、耳鳴り、難聴を繰り返す病気で、治りにくいので注意が必要です。めまいがなく、耳鳴りや難聴の発作を繰り返すものは「メニエール病非定型例(蝸牛(かぎゅう)型)」と呼ばれています。「メニエール病」は聞こえや体のバランスをつかさどる内耳に内リンパ水腫という一種の水ぶくれが生じることにより発症します。内リンパ水腫ができる原因は不明ですが、ストレスや疲労により、内耳を満たす「リンパ液」の循環が悪くなり、内耳に「水ぶくれ」をおこすという説もあります。

実は、今回紙面でお話する機会をいただいた私も「メニエール病非定型例(蝸牛型)」の患者の一人です。2年ほど前に仕事に関係するストレスがあり、右耳の低音障害型難聴を数回繰り返しました。幸い聴力は正常に回復しましたが、初期にはめまい感も経験しましたし、現在も時々軽い耳閉感を感じることがあります。「医者の不養生」とはよく聞く話ですが、自分の専門領域の疾患にかかるとは、正直思いませんでした。おかげで、内耳疾患の不快感や、不安感を身をもって実感することができたと思います。

私は、「急性低音障害型感音難聴」の患者さんには、「これは無理をしていることを知らせる体のサインです」と説明して、場合によっては心療内科でのカウンセリングをお勧めしています。

現代社会において、ストレス管理は容易なことではありませんが、耳鼻咽喉科医の立場からもその重要性を訴えていきたいと思います。