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腹腔鏡下手術について(2010年4月6日掲載)

玉木 正人・おもろまちメディカルセンター

技術 器具で安全性向上

最近では腹腔(ふくくう)鏡下手術は珍しいことではありませんし、多くの皆さまも聞き覚えのある単語ではないでしょうか。「腹腔」とは「おなか」のことを意味します。おなかといっても腹膜に覆われている部分で、胃や小腸、大腸などの腸管や肝臓、胆嚢(たんのう)、脾臓(ひぞう)、女性なら卵巣、子宮などがこの腹腔内にある主な臓器となります。次いで腹腔鏡の鏡とは「ミラー」ではなくカメラのことを指します。よく胃カメラを胃内視鏡と言うのと同じです。

腹腔鏡下手術とは「おなか」の部分の手術のために、腹腔鏡という棒のような丸いカメラを、おなかを切って、腹腔内に挿入し、テレビモニターに映し出された画像を見ながら行う手術のことです。よく誤解されていることとして、腹腔鏡下手術を「おなかを切らない手術」と思っておられる方がいらっしゃいますが、あまり大きく切らなくて良いというだけで、私たち外科医は妖術師ではありません、切らなくて臓器は取り出せません。

おなかの中には臓器やら内臓脂肪などがつまっていますので、そのままカメラを挿入しても、中は見えません。そこで一般的に用いられているのが、気腹装置というものです。おなかの中にガス(二酸化炭素)を送気して空間を作り出し、中が見えるようにするのです。カエル腹のイメージでしょうか。

今度はこれでおなかの中がモニターで見ることができるようになりました。次に登場するのがいろいろな処置用器具となります。おなかに入る棒のような細い管の先には、開いたり閉じたりする機構があり、つまむだけでなく、切ったり、電気や超音波メスになっていたり、血管を閉めるクリップや、おなかの中を、糸で縫ったりするなどさまざまな器具があり、それぞれを使い分けながら手術を進めます。

胆石をはじめ、次第に良性だけでなく、悪性(がん)疾患に対しても適応が広がっています。しかしながら、手術の後や炎症などで腹腔内がくっついているためにカメラが挿入できなければ、その手術そのものができませんし、進行がんの手術の場合は、まだ議論が分かれている段階です。今後、外科医の経験や技術の蓄積、次々に優れた道具の開発が進む中で、より多くの手術を安全に行うことが可能になっていくものと考えています。

現在では鮮明なハイビジョン画像で見られますが、近い将来現在人気の映画のように3D映像で奥行きも分かる画面で鏡視下手術が行われるようになるものと想像しています。未来の手術はどうなるのか夢は膨らみます。