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病気になっても…(2010年2月16日掲載)

久高 学・Dr.久高のマンマ家クリニック

心の持ちようで病退散

人として生まれたからには生老病死は避けられないものです。人間は死があるから一生懸命生きようとするし、老いるから青春を満喫しようとします。それではなぜ人は病気になるのか? それは健康に生きることの大切さを知るためでしょうか。となれば病気は気づきであり、健康のありがたさを教えてくれるものだから感謝すべきものです。しかし、残念かな人は病気になったとたんに病人になってしまいます。病気になった人と病人は似て異なるものです。

人は誰でも生きている限り必ず病気になります。だから「病気の原因は?」と尋ねられると、「それは生きているから」というのが答えなのかもしれません。私は乳がんを専門としていますが、病気になった後の経過は病気に対する考え方で決まってしまうんじゃないかと思うことが多々あります。

男と女では病気になったときの対応がちょっとばかり違います。入院すると男はカーテンを閉め切って自分の世界にこもり始め、かたや女性はオープンにしていつもおしゃべりばかりしています。前者は病人になってしまった人、後者は病気になっただけの人。いいセルフイメージを持つことは大切です。病人というセルフイメージを作ると、なんでもない病気でも重病人になっちゃいます。病人にならないための心持ちは、笑うことと人のために尽くすことだと思っています。

病気だから人の役になんて立てないですよと考えるのは病人の考え。先日もある患者さんがわれわれスタッフのために、9人分のお弁当を作ってきてくれました。他人のためにと考えていると病気が逃げていくもんです。

ある女性乳がん患者さんの名言を紹介しましょう。「国は捨てても女は捨てるな」ねぇーいいでしょう。90歳代のこの方は、いつもきれいにお化粧して外来にやってきます。普段は車いすを利用していますが、診察室では主治医にいいところを見せようと歩いて入ってきます。見事なセルフイメージメーカーですね。

がんと宣告され一時的には落ち込んでしまっても、時間の経過とともに女性は強くなりいつの間にか病人ではなくなります。ある患者さんとの会話。「先生、最近主人とけんかばかりしてよく眠れないんです。睡眠剤いただけませんか?」「そうですか、それはお困りですね。けんかしてイライラするので睡眠剤を飲んでゆっくり休みたいんですね」「いやそうじゃなくて、こっそりと主人に飲ませて寝込んだところを思いっきり殴ってやりたいと思います」トホホ、女性は強い。