沖縄県医師会 > 健康の話 > 命ぐすい・耳ぐすい > 命ぐすい・耳ぐすい2010年掲載分 > がんと飲酒の関連性

がんと飲酒の関連性(2010年2月9日掲載)

伊良波 史朗・県立南部医療センター・こども医療センター

毎日適量超えリスク高く

2010年が明け、周りを見渡すといつもの生活に戻り、落ち着きだしたところでしょうか。年末年始の恒例行事として、あいさつ回りや忘年会、新年会でお酒を飲む機会が多かったことと思われます。仕事柄、日常的にがんの患者さんと接することが大部分である私も40代―メタボ世代の例に漏れず、アルコール「大好き」人間であります。雑誌やテレビなどでは、がんと関連のある因子として喫煙がよく取り上げられますが、今回、お酒とがんの相関やリスクについて調べ触れてみたいと思います。

アルコールは体内に入ると体内の酵素によりアセトアルデヒドという物質に変化、その後さらに分解され酢酸となり体外に排泄(はいせつ)されます。その酵素のうちの一つに、アルデヒド脱水素酵素というものがあり、この酵素活性の強弱が人種、個人によりそれぞれ異なります。

日本人は、一般的にこの活性が弱い人が多いとされています。この酵素の活性の弱い人はアルコールに弱く、お酒が飲めなかったり、飲むと二日酔いになりやすいとされています。アルコールとアセトアルデヒドは、発がん物質でありアルコールの分解能力が弱い方が飲酒家になると発がんのリスクが高くなるとされています。

お酒は口から入り消化管を通り排泄されるため、がんの発生する部位としては、口腔(こうくう)・咽頭(いんとう)、食道、大腸などのがんの発生率を高めるとされています。

また、欧米の疫学調査などでは飲酒量が増加すれば乳がんのリスクも高くなると報告されているものもあります。

当然ですが、飲酒および喫煙を日常的に行っているグループと、そのいずれも行っていないグループとでは、前者のグループの発がん率は2〜3倍程度、高いとされています。

「酒は百薬の長」とされていますが、いったいどの程度の飲酒量ならば、大丈夫なのでしょうか? 文献的には、日本酒で1日2合以上(300グラム/週)を毎日飲んでしまうと、発がんのリスクが高くなるとされています。逆に、発がんのリスクを下げる飲酒量としては日本酒で2日で1合未満(150グラム/週)であれば、お酒を飲まない人よりも発がんのリスクが下がるとされています。

何事も適量が一番ということでしょうが、アルコール「大好き」人間としては、晩酌と称して最低でもビール1、2本飲んでおり、飲酒量を減らすことはなかなか厳しい。ですが、一週間に3〜4日程度は飲まない日を作るのが肝要と思われました。