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気胸(2010年1月26日掲載)

饒平名 知史・国立病院機構沖縄病院

肺に孔があき縮む状態

肺は胸腔(きょうくう)内(胸郭と横隔膜に囲まれた閉鎖された空間)にあって、からだに必要な酸素を取り込み、不要な二酸化炭素を排出する働きをしています。その肺に孔(あな)があき縮んでしまった状態を気胸といい、孔があくと本来は呼吸によって体外に排出されてしまう空気が胸腔内に溜(た)まり、肺の膨らみを妨げてしまいます。

気胸の多くは、肺の一部がブラと呼ばれるうすい袋になり(嚢胞(のうほう)化)、それが破れることで起こります。これを「自然気胸」と呼び、10代後半から20代の背が高く、痩(や)せ形で胸板の薄い(気胸体型と呼ばれます)男性に多く発生します。

また、肺気腫、肺腫瘍(しゅよう)、肺結核などの呼吸器疾患が原因となって起こる「続発性気胸」、交通事故などで折れた肋骨(ろっこつ)が肺を傷つけて起こる「外傷性気胸」、病院で針をさす検査や治療を受けた際、針の先端が肺を傷つけて起こる「医原性気胸」、月経周期に一致して起こる「月経随伴性気胸」などがあります。

主な症状は息切れ、呼吸困難、胸痛などですが、まれに、無症状で健康診断などで発見される場合もあります。診断は、胸部レントゲンやコンピューター断層撮影(CT)検査で肺の虚脱を確認することでなされ、同時にブラの存在や肺病変の有無について検索します。

自然気胸の治療についてですが、肺の虚脱が軽い場合は、安静のみで破れた孔が自然に治り、胸腔内の溜まった空気が吸収されて、肺の膨らみが元通りになるのを待ちます。また、虚脱が中等度〜重度の場合は、胸腔ドレナージ術(体表からビニール製のチューブを胸腔内へ挿入し吸引を行うこと)が必要になります。これは、胸腔内に溜まった空気を体外に排出し、肺が膨らみやすくなるようにするのが目的で、処置後は破れた孔が自然にふさがるのを待って、ドレナージチューブを抜きます。以上を保存的治療と呼びますが、自然気胸の原因であるブラに対する治療は行っておりませんので、約50%の頻度で再発が見られます。

一方、胸腔ドレナージ後も改善しない気胸や自然治癒後に再発を繰り返す場合は、手術によって破れやすい部分(ブラ)の切除が推奨され、その場合の再発率は10%以下で保存的治療と比べて治療成績は良好です。また、最近では胸腔鏡下手術といって、胸に2センチほどの切開を3カ所おき、ここからカメラや手術器具を挿入して、ブラ切除が可能になりましたので、以前のように大きく胸を開かずにすむようになりました。胸の治療方針でお悩みの場合にはぜひ、専門の医療機関への受診をお勧めします。