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負担かけない治療法(2010年1月19日掲載)

原国 毅・浦添総合病院

切らないで治す脳血管病

医学の進歩に伴い、体に負担をかけない治療法が開発され、いろいろな臓器で治療が行われています。脳においても、メスを使わない、体に優しい治療方法が開発されています。今回、脳血管に対するメスを使わない治療(血管内治療)について述べたいと思います。この方法で治療できるものに、脳動脈瘤(りゅう)(血管の一部がこぶ状にふくらんだもの)と頸部(けいぶ)内頸動脈狭窄(きょうさく)(首に触れると拍動を感じる血管が狭くなった病気)があります。

脳動脈瘤は、破けるとクモ膜下出血を起こします。クモ膜下出血は、突然に起こる、命にかかわる非常に怖い病気です。動脈瘤の治療には、クリッピング術とコイル塞栓(そくせん)術があります。クリッピング術は、開頭を行い、動脈瘤を直接見ながら、クリップという金属でできた洗濯ばさみのようなもので、動脈瘤をつぶす方法です。一方、切らないで治せるコイル塞栓術とは、血管の中に細い管を挿入して、動脈瘤の中まで入れます。この管の中に、コイルという糸のように柔らかいものを入れていきます。瘤の中に、コイルを詰めていくことで、血液が瘤の中に入らなくなります。この結果、破裂を予防します。皮膚を切らないため、非常に体に優しい治療で、高齢者や体力のない方でも受けられる治療です。また、開頭術では治療が困難であった動脈瘤でも、この方法で治療がやりやすくなりました。

脳梗塞(こうそく)の原因として、頸部内頸動脈狭窄症があります。食生活が豊かになったことも原因ですが、最近増えている病気です。頸部内頸動脈は、首を触ると拍動を感じる血管ですが、この血管は脳に栄養を与えています。血管の壁に、アテロームという脂肪や石灰が沈着することで、血管が狭くなります。この狭くなったところに、血のかたまりが生じて、これが脳の血管の先に飛んで、脳梗塞を起こします。

従来は、血管を開いて、このアテロームを取り除いていました。しかし、高齢者や心臓の血管の狭窄を合併した方の場合、従来の治療方法では、体に負担が大きくなります。この場合、ステント(金属の網状の筒)を血管の中から広げて、血管を拡張させる方法があります。この方法は、昨年度より保険適応となりました。

血管内治療は、従来の治療法とは異なり、体に少ない負担で治療が行えます。しかし、新しい治療であるので、安全に行えるように、2000年より専門医制度が導入されました。沖縄県内でも、本土と変わらないレベルの治療が、専門医を中心に行われています。