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災害医療・DMAT(2009年11月17日掲載)

佐々木 秀章・沖縄赤十字病院

瓦礫の下の医療活動も

1995年1月17日、死者6434人、負傷者4万3792人、30万人を超える避難民を出した阪神淡路大震災は、被災された方々はもちろんですが救急医療関係者にとっても非常に重い出来事でした。災害とは縁遠いと考えられていたところで大地震が起こり、日常の救急医療なら可能であった救助→現場処置→適切な搬送→病院での治療という流れができれば救えたはずの方も多数亡くなられたからです。

日本の災害管理・災害医療の現実をみて、この「避けられた災害死」を少しでも減らすために地震から多くを学びさまざまな対策が採られてきました。DMAT(Disaster Medical Assistance Team:災害派遣医療チーム)もそのひとつです。これは大地震や航空機事故といった災害時に迅速に駆けつけ、発生直後の急性期の医療処置を行う医師・看護師・調整員からなるチームで、現在沖縄では7医療機関9チームが専門研修を修了し国から指定を受けています。

主な業務は消防・警察・自衛隊などと一緒に現場でトリアージ(傷病者に搬送や治療の優先順位を付けること)や救護所での治療のほかに、傷病者の殺到する被災地の病院支援や重症傷病者を被災地外へ搬送することなどです。また現場で活動している関係者への医療支援や、救出に時間がかかるケースでは閉じ込められたままの患者さんに治療を行う「瓦礫(がれき)の下の医療」を求められることもあります。

このためには病院内とは異なる環境での安全確保や指揮命令系統、状況に合わせた処置、適切な搬送を行わなければならず、さらに食事などの生活まで自己完結型が求められます。実際、DMATはこれまでにJR福知山線脱線事故や中越地震、岩手宮城内陸地震などで活動し高い評価を得ています。

災害時には多数の傷病者が発生しますが、消防・救急や病院での受け入れ能力は限られています。もしかしたら病院そのものが被害を受ける可能性もあります。そのような状況で皆の協力のもと、限られた資源でより多くの被災者に効率よく医療を提供し、災害発生直後の現場から避難生活、復興への経過を通して避けられた災害死をゼロにして体と心の支えとなるのが災害医療の目標です。

最後に皆さまの災害に対する心構え、準備はいかがでしょうか。たとえば津波警報を侮ってはいませんか? 最近は「災害は忘れる前にやってくる」と言われています。「沖縄に災害はない」は果たして本当でしょうか?