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リハビリテーション(2009年11月10日掲載)

仲地 聡・ちゅうざん病院

今から「本来」の状態へ

何かの集まりで雑談をしているとき、リハビリテーション医(リハ医)が次のようなことを言っていました。「今は仕事で忙しいし、ゴルフやジョギング、ガーデニングなどの趣味は定年してから始めようと思っている」

「もともと無趣味だから」と笑っていましたが、よく聞いてみると確かに毎日仕事に追われる生活をしているらしいのです。

皆が一方向を向いてがむしゃらに突き進んでいた1960年代、高度経済成長期と違い、現在は多様なライフスタイルが当たり前になっています。ところが、昨年秋のリーマンショック以降の景気悪化も加わり生活するのに精いっぱい、生活のほとんどを仕事が占めてしまい、ワークライフバランスが崩壊している方々も少なくないでしょう。

さて、不幸にしてけがや病気のために入院し、手術や治療のあとリハビリテーションを経験した方々も少なくないと思います。

「リハビリ」と略記されることが多く、この方が一般にはなじみがあるだろうと思います。

リハビリでは硬くなった関節を動かしたり、力が弱く動きの悪くなった手足を動かして再び動くようにすることだけではありません。リハビリの目標にはQOL(生活の質)の向上というのがあります。理学療法士、作業療法士そして言語聴覚士などのリハビリのスタッフが行っている事はこの目標を達成するためのごく一部にすぎません。

起き上がって座り、立ち上がりそして歩く練習をすることも、着替えやスプーンを使っての食事や発音の練習も、すべては私たちが尊厳を保ちつつ生活するための援助ということです。また救命救急センターでの救命処置、予定手術や各種の検査なども本来の生活に戻るために行われることなのでリハビリの一部と考えられます。さらに退院後においては適度な運動と食事など生活習慣の改善を促す指導もリハビリと考えることができます。

物の本によればリハビリとは再び人間としてふさわしい状態に戻すこととあります。つまり、けがや病気、障害の有無にかかわらず現状が本来の自分にふさわしくない状態であればそれを回復する必要があり、リハビリを要すると考えられます。

先に挙げたリハ医もワークライフバランスの崩れた現状は本来の姿ではないと考えられます。医者の不養生とはよく言ったものです。本来の姿を取り戻すのは「定年を迎えてから」ではなく「今」ではないかと思います。そして私を含め多くの人たちにとって「今」こそリハビリを始めるその時だと考えます。