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違法薬物なぜ悪い?(2009年10月27日掲載)

西村 直之・あらかきクリニック

深刻な健康被害の恐れ

毎日のようにメディアで芸能人や著名人の薬物使用が取り上げられ、大麻や覚せい剤がどこか日常化してしまっている感があります。警察の取り締まりや薬物乱用防止教育などの取り組みにもかかわらず、覚せい剤の使用者はさほど減少せず、大麻の使用者は増加しているようです。

覚せい剤は、強力な依存性を持つと同時に、幻覚や妄想、情緒不安定などを引き起こしやすく、犯罪か否かの以前に人間の脳が安全に付き合うことが困難な薬物だと言えます。使い続ければ同じ効果を得るのにより多くの薬物が必要となり、薬物が切れてくるとイライラして落ち着かず結局、また使用してしまう悪循環に陥りやすい特徴があります。自分では上手にコントロールして使っているつもりでも、徐々に人格の変化や精神状態の悪化が生じ、子どもへの虐待や家族への暴力も生じやすく、気がつくと周りから信頼できる人たちが去ってしまっていることが少なくありません。

大麻は、合法化されている国があることなどもあって、健康への害が過小に評価されがちですが、依存性はもとより、肺がんの危険が高くなること、感情障がいなどの精神医学的な問題が生じやすくなるなど人生に与える影響は少なくありません。近年、米国でも大麻依存の治療者数が急増しており、深刻な健康被害を起こし得る薬物として対策が変化してきています。

大麻も覚せい剤も日本においては非合法の薬物であり、使用する限りいつでも犯罪者として、築いてきたものを失ってしまう不安を抱え続けなければなりません。そして実際に仕事や信頼や家族など多くのかけがえのないものを失ってしまいます。また、本人だけでなく家族や友人など身近な人たちを巻き込んでしまいます。そしてその傷は、大変深いものとなり、次の世代にまで及びます。

薬物に手を出せば社会からの厳しい非難が向けられます。しかし、薬物に手を出すに至った人にも理由があります。ただ非難するだけでなく、どのように回復の支援を行うかを周囲の人たちは考えていかなければなりません。身近な人の薬物問題に出合ったら、まずは相談できるあなたから相談につながってください。そして、薬物乱用・薬物依存のことをしっかり学んでください。沖縄県には、薬物問題の公的な相談窓口である保健所や精神保健福祉センター、ダルクやガイアなどの当事者活動もあります。ぜひ勇気を持って相談してください。薬物依存は回復可能な病ですから。