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心房細動(2009年10月20日掲載)

大城 力・翔南病院

心不全・脳梗塞の原因に

日本は2度のWBCで世界一の栄冠に輝き、私たち日本人として大変誇りに思います。その半面、1回目の監督として予定されていた日本球界一有名な名監督が脳梗塞(こうそく)による半身まひのため、監督を断念せざるを得なくなったことは大変残念です。また、沖縄サミットを招聘(しょうへい)した時の総理大臣もサミット直前に脳梗塞で無念の逝去をされましたが、お二人の脳梗塞の原因はいずれも「心房細動」と呼ばれる不整脈が原因でした。

脳梗塞全体の27%が心臓病由来で、その大部分が心房細動とされております。

私たち循環器医が、日常的に最もよく遭遇する不整脈が心房細動です。脈がバラバラとなり、「胸苦しさ・胸の圧迫感・恐怖感」など、かなり強い症状を自覚する方もいれば、一方、全く無自覚の方までおられ、自覚症状はさまざまです。しかし、この不整脈の一番の問題点は症状の強さよりも、心不全や脳梗塞を起こす可能性が高いということです。そこで、不整脈の話をする前に心臓の正常なリズムの説明をします。心臓は上の部屋と下の部屋があります。血液を送るポンプの働きをしているのが下の部屋で「心室」といいます。全身の血液が戻ってくる上の部屋のことを「心房」といいます。

通常、心臓は1分間に60〜100回、規則正しいリズムで心房―心室と拍動を繰り返して、全身に血液を送り出しています。この心臓のリズムは、心臓のてっぺんにある洞結節と呼ばれる司令塔から心臓に「収縮せよ」という命令(電気信号)によって調節されています。

心房細動は電気刺激が発生するはずのないところから、究極に乱れた電気信号が発生した状態で心房が細かく震え、ポンプとしての機能は完全に失われてしまいます。また、心房の乱れた電気信号が不規則に心室に伝わるため、心室の拍動も全く不規則の状態となり、心臓ポンプ失調症(心不全)の原因となります。また最も懸念されることは心房の収縮が細かく痙攣(けいれん)状に震えた状態では心房内で血液の流れによどみが生じ、血の塊(血栓)が形成されます。通常心房細動の状態が2日間以上持続すると血栓ができやすい状態になるといわれ、そのまま放置しておくことはかなり危険な状態といえます。

心房細動の治療は、まず、脳梗塞を予防するための抗血栓療法と不整脈の頻度を抑える薬物療法があります。さらに最近では発作性心房細動の原因となっている個所に高周波を当てて治療する高周波カテーテルアブレーションがあり、とても効果的です。心房細動と診断された方や動悸(どうき)を自覚する方は一度不整脈の専門病院でご相談ください。