咳(せき)にもいろいろありまして、乾いた咳、痰(たん)のからむ咳、ヒューヒュー音を伴う咳などそれぞれ悩ましいものです。一方、老人や脳血管障害後の患者さんなどではのどの反射が低下するため出るべき咳が出なくて困る場合もあります。
では一体咳とは何なのでしょう。実は咳は私たちの体を守るための大事な働きをしているのです。外からの異物の進入を防ぎ、気道にある何らかの異物を外に追い出し、そして呼吸器系に何らかの異変が生じていることを私たちに知らせるなどです。つまり咳そのものが悪者ではないのです。従ってただ単に咳止めで咳を止めるのではなく、その背景にある咳の原因を知りそれを治療することが大切なのです。特に痰の多い場合の咳止めは、痰の排出を阻害し、結果的に逆に病気を悪化させることさえあります。
とはいえ、咳は大変不愉快で、患者さんが病院を訪れる原因の中でも最も頻度が多い症状の一つでもあります。発熱・黄色痰・呼吸困難感・胸痛など、気になる症状を伴う場合には必ずお近くの医療機関で診察をお受け下さい。多くの疾患は適切な治療により比較的短期間で軽快します。ところが、中には重篤な疾患が隠れている場合があります。特に咳が3週間以上続く場合には注意を要します。そこで、その代表的な疾患の特徴を簡潔にお示しします。
(1)アレルギー関連の咳:のどのイガイガ感や、夜間から明け方に咳症状が悪化しやすい特徴があります。
(2)副鼻腔(びくう)炎や鼻炎などが関連した咳:鼻水、鼻詰まりがあり、夜中の咳が多くなります。
(3)胃食道逆流による咳:寝入りばなの咳が多く、胸焼けを感じる場合もあります。
(4)感染症関連の咳:風邪の後遺症や、百日咳の感染後の咳も最近注目されています。ここで忘れてはならないのが結核です。微熱や体重減少などがあれば要注意です。
(5)薬剤関係の咳:ほかの疾患で治療中の方はその疾患や治療薬との関連性の有無を検討してもらって下さい。健康食品などと関連する場合もあります。
(6)喫煙関連の咳:慢性閉塞(へいそく)性肺疾患(たばこ肺)の患者さんが急増中です。咳・痰・呼吸困難感が次第に強くなり、人生の後半に大変つらい思いをします。また肺がんにも要注意です。沖縄県の男性の肺がん死亡率はなんと全国トップクラスです。
咳にもさまざまな原因がありますので、お困りの方はお近くの医療機関にお気軽にご相談下さい。しかしいずれの疾患も普段の健康管理が大切です。定期的な検診と、早期発見・早期治療により平穏に解決する場合が多いのです。とはいえ、何よりも予防に勝る名医なしです。