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肺がんの多い沖縄県(2009年9月22日掲載)

宮城 淳・沖縄赤十字病院

定期検査で早期発見を

2006年に「がん対策基本法」が制定されてから、がんに対する取り組みがはじまりました。これまで多くみられた胃がん、大腸がん、肝臓がんによる死亡率が減少しております。しかしながら肺がんによる死亡率だけはどんどん増え続けて、近年ではがん死亡のトップとなっています。特に沖縄県は全国でも肺がんでの死亡率が最も高い地域の一つです。

肺がんによる死亡率を下げるためにはどうすればいいか? それは(1)肺がんの発症を防ぐ(2)早期に発見して治療を行うという事です。

肺がんの発症を防ぐにはどうしたらいいか? 医学的に証明されている肺がんの原因として喫煙が最も重大です。喫煙は肺がんのほかに口腔(こうくう)・咽頭(いんとう)がん、食道がん、胃がんなどさまざまな「がん」がおこる原因となっています。喫煙の抑制を目指した政策が日本を含めて世界中の国々で取られていますが、愛煙家も多くみられる中、これは個々の考え方だと思います。医療者の立場としては禁煙を勧めるしかありません。かくいう私も大学院時代の多々なストレスの中で愛煙家となりました。しかしながら数年前に、友人の愛煙家ドクターを膵臓(すいぞう)がんで亡くしました。それ以来、喫煙をいっさいやめています。

喫煙は肺がんの最大のリスクでありますが、タバコを吸わなくても肺がんになる場合もあります。喫煙が発がんの原因と言われているのは、肺がんの中でも扁平(へんぺい)上皮がんや小細胞がん、大細胞がんといった種類の肺がんです。腺がんは、やはり喫煙者に多く発症しますが、受動喫煙者やまったくの非喫煙者も発生してきます。これは肺がんの中でも最も頻度が高く、特に女性に多くみられます。

禁煙すれば大方の肺がんの発生を防ぐことはできますが、喫煙率の高いわが国の現状では夢物語です。よって次に考えられる対策としては早期に発見する事です。たとえ予後の悪い肺がんであっても、早い時期に見つかれば治る確率は非常に高くなります。肺がんの症状である咳(せき)、血痰(けったん)、胸痛や呼吸困難等が出る前に、無症状のうちに見つけることです。それには毎年検診を受けることが重要です。基本的に胸部レントゲン検査を行いますが、喫煙者でリスクの高い方は最近ではオプションでCT検査(コンピューター断層撮影)も行っています。レントゲンでは見つからないような早期のがんも容易に見つかり、胸腔鏡手術など体に影響の少ない治療で治すことができます。早期発見こそが肺がんの死亡率低下に最も効果的ですので、皆さんもきちんと検診を受けて下さい。