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睡眠時無呼吸症候群(2009年9月15日掲載)

新垣 紀子・ちばなクリニック

脳が覚醒、昼間の眠気に

「お父さんのいびきは怪獣みたい」「夫は眠っていると何度も呼吸が止まるので心配で…」「運転中の眠気がひどく、信号待ちで眠ってしまった」。これは当院の睡眠時無呼吸外来を受診した患者さんの訴えの一部です。

このように、いびきや睡眠中に呼吸が止まることがある、あるいは昼間にひどい「眠気」におそわれることがある方は、睡眠時無呼吸症候群の検査を受けてみる必要があります。この病気は睡眠中に何度も呼吸が止まるのが特徴ですが、この繰り返しが高血圧の原因となり心臓病や脳卒中の発生につながります。眠気は重大事故の発生原因にもなります。

ではどのような症状からこの病気を疑ったらよいのでしょうか。睡眠時間はたっぷりとったはずなのに疲れがとれない、やる気が起きない、朝起きると頭がすっきりしない、頭痛がする、夜中に何度もトイレにおきる(おねしょで困る)、集中力がない、忘れっぽい、いらいらする、性欲の低下やインポテンツがある、胸焼けがある、寝汗をかくなどが症状です。このためうつ状態と思いこみ心療内科や精神科、頭痛で脳外科、夜間の頻尿で泌尿器科を受診された患者さんもいます。子供の場合は授業中にじっとしていることができず多動性であったり、学力や発達の低下との関連も知られています。

この病気になりやすいタイプは、太っている、首がふとくて短い、顎(あご)が小さい、のどちんこや舌が大きい、扁桃(へんとう)が大きいなどです。このタイプの方は空気の通り道(上気道)が狭いため、睡眠中に無呼吸が発生します。無呼吸により脳は覚醒(かくせい)状態となり、頻回に睡眠が分断され、昼間の眠気の原因となるのです。

治療は、肥満があれば減量です。病気が中程度以上の患者さんではCPAPという呼吸補助装置による治療方法があり、1998年に保険適応となりました。鼻にマスクを装着し、一定の風圧をかけることで閉塞(へいそく)したのどの奥を押し広げる治療法です。扁桃摘出などの外科的な治療に関しては耳鼻科とよく相談して決める必要があります。軽症の場合はマウスピースを作成したり、あおむけに眠らないという対処もあります。重症で放置した場合は、7〜8年後に20〜30%の患者さんが心臓病や脳卒中で死亡するというデータも報告されています。

沖縄県は残念ながら肥満者の割合は男女とも全国第1位という状況です。多くの方にこの病気が潜伏している可能性があります。長寿県沖縄の復活のためにも、いびきや眠気を簡単に考えず一度は病院で相談してみましょう。