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“ありっ アニサキス!”(2009年9月8日掲載)

宮城 剛・西崎病院

おなかに異変 即検査を

皆さんはアニサキスという言葉を聞いたこと、見たこと、または口にした(食した)ことがありますか? サバ、サンマなどを刺し身で食べた後に急激な痛みを訴えたとき、内視鏡検査で胃の中に線状の生き物が胃壁にかみついていることがあります。実はイカ類や魚類、特にサバ、アジ、イワシの生食によってアニサキスやテラノバと呼ばれる線虫の幼虫がわれわれの体の中に入ってくることがあるのです。

アニサキス幼虫は直径0・5ミリ、長さ3センチ程度ですが、魚が生きているうちは魚の腸の中にいますが、魚が死ぬとやがて自分で腸から肉のほうに移動してきます。それを人間が刺し身として食することになります。

1980年までアニサキスの発生が報告されなかった沖縄県においても、生鮮魚介類の空輸が始まった時期以降、報告が増えてきています。実際調べてみると、県内で水揚げされたサバには少なく、県外からの移入サバに多いようです。アニサキス症の典型的な症状は、食後数時間から10時間くらいで急激に発症する激しい腹痛、嘔気(おうき)、嘔吐です。

しかし、まれですが腹部症状なく定期の胃内視鏡検査で発見することがあります。私も数年前に症状のない男性の胃内視鏡検査を行ったところ胃の壁になにやら白い線状の虫がいるではありませんか。私はありっアニサキス≠ニ叫んでしまいました。そして鉗子(かんし)を用いて摘出しましたが、他の部位にも何匹かいるのです。合計11匹のアニサキス幼虫を摘出しました。長さは2〜3センチでした。検査後お話を聞くと数日前にサバの刺し身を食したということでした。

ではアニサキスに対して予防法はあるのでしょうか? 実はアニサキスは高温に弱く、60度では数秒で死滅します。しかし低温では2度でも50日間生きています。マイナス20度では数時間で死滅し始め24時間を経過してほぼ全滅となるようです。オランダではニシンに対してマイナス20度、24時間以上の冷凍を義務づけて、アニサキス症が激減したそうです。

感染予防として、アルコール、消化酵素、酢、みそ、しょうゆ、ワサビなどが試みられましたが、ワサビ以外は滅菌効果がないことがわかりました。しかし、ワサビでも滅菌には1グラム/5ミリリットル濃度という大量で20分以上要するため実用化には至っていません。結局よく噛(か)んで食べるにつきます。そして刺し身などを食べた後、なんだかおなかの様子が変に感じたなら医療機関を受診し内視鏡検査を受けてみてください。