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「紹介状」の紹介(2009年7月14日掲載)

安谷屋 亮・県立宮古病院附属多良間診療所

医師つなぎ 診断の一助に

へき地医療を志し、念願の離島診療所へ赴任して1年が過ぎました。総合病院とは違う診療スタイルに四苦八苦しながらの毎日を過ごしています。すべての医療を診療所で完結できると理想的ですが、沖縄本島や宮古、八重山の総合病院と違い、特殊な検査や治療はできないため、現状で最良の医療を提供できるよう心がけています。

しかし時には、診療所では診断・治療が難しく、専門的な診察をうけてもらいたい状況に遭遇します。

患者さんから特別な検査を希望されたり、専門医の診察を受けたいと相談を受けることもあります。そのような時に書くのが「診療情報提供書」、一般的に「紹介状」と呼ばれる文書です。その内容は、紹介理由に合わせて、今までの病歴や治療経過、処方などの診療記録をまとめたもので、紹介するに至った主治医の考えや意見も含まれます。

紹介を受けた医師は、紹介状の内容を参考に診察や治療を計画していくことになります。紹介状は医師同士を結び、患者さんの情報を伝える重要なコミュニケーション手段です。

診療所を定期受診している方で、「重い病気だと困るから大病院で診てもらおう」「旅のついでに専門医に診てもらおう」と軽い気持ちで、紹介状無しで病院を受診する人もいますが、これはあまり感心できません。多くの病気は地域の医療機関で対応可能です。自分では重い病気だと考えていても、医師が診ると大した病態ではないこともあるため、まずはかかりつけ医を受診し、紹介が必要か相談しましょう。いわゆる大病院は、比較的重症な患者さんのための病院であるため、軽症患者だけで手いっぱいになるという事態を避けたいところです。

また受診先で前医と同じ検査や診察を繰り返される、条件が合わず検査ができない、症状に合わない診療科を受診してしまう、などという事態も起こります。病歴やお薬の相互作用等の関係で、本来は併用できないお薬が処方されたり、やってはいけない検査が行われる危険もあるのです。

かかりつけ医に紹介状を頼むのは何だか気まずい、と思うかもしれませんが、気後れせずにまずはちゃんと相談してみましょう。主治医にとっても、専門医へ紹介することでよりはっきりした診断ができて、後の治療の一助となりますし、紹介希望を聞いて隠れた主訴や症状に気づき、治療につながることもあります。患者の求めに応じて紹介状を書くのは医師の義務であります。

紹介状を上手に活用しましょう。