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ロコモティブシンドローム(2009年7月7日掲載)

大嶺 啓・沖縄リハビリテーションセンター病院

適度な運動 継続で予防

先日、テレビ番組「きょうの健康」で取り上げられた「ロコモティブシンドローム」をご存じでしょうか。まだまだ聞き慣れない言葉ですが、ロコモティブシンドロームは略して?ロコモ?、日本語では「運動器症候群」となり、骨、関節、筋肉といった運動器の機能が衰えて、日常生活での自立度が低下し、介護が必要になったり、寝たきりになる可能性が高い状態をいいます。

近年、要介護や寝たきりになる人が急増しており、介護が必要と認定された人の数はこの6年間でおよそ2倍に増加しています。その原因には「脳卒中」や「認知症」がありますが、実は約4人に1人は転倒・骨折や関節疾患などの運動器の障害が原因になっています。最近の研究で、運動器の障害はいくつも重なっていることがわかってきたため、要介護や寝たきりを防ぐには、これまでとは違う概念で運動器の障害をとらえることが必要になってきました。そうした考え方から、新たに提唱されたのが「ロコモティブシンドローム」です。

?ロコモ?の主な原因には「バランス能力の低下」「筋力の低下」「骨粗しょう症」「変形性関節症」「脊柱管狭窄症」などで多くの場合、これらが重なって起こります。現在、?ロコモ?の大規模な実態調査が行われており、?ロコモ?とその予備群は全国で推定約4700万人、また70歳以上に限ると、95%以上の人が当てはまるといわれています。

?ロコモ?かどうか確認する方法には、「ロコチェック」があります(図参照)。5項目のうち1項目でもあれば?ロコモ?の可能性があります。その予防や進行を防止するには、全身の状態にあわせた適度な運動である「ロコモーショントレーニング」、略してロコトレが必要です。ロコトレとは関節に過剰な負担をかけずに骨を強くし、筋肉を鍛える運動で、代表的な方法には開眼片脚立ち(ダイナミックフラミンゴ療法)やスクワットがあります。

その他、ストレッチ、ラジオ体操、ウオーキングなどいろいろな運動を積極的に行い、そして生活の習慣の中に取り入れていくことが大切です。

しかし、痛みがある場合は無理をせずに、運動器の専門医である整形外科医に相談し、自分に合った適切な運動を継続することをお勧めします。

運動器は、体の中で唯一自分の意志で動かすことができる器官です。ですから?ロコモ?で大切なのは上手に体を使う事で、その主役はあなた自身なのです。