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新型インフルエンザ対策(2009年4月21日掲載)

星野 慎一・沖縄県立北部病院

マスクや手洗い習慣に

「新型インフルエンザ」は通常のインフルエンザと違い、人類がこれまでかかったことのない新しいタイプのインフルエンザです。このため、誰も抗体を持っていないので、多くの人が感染すると考えられています。

国の方針としては、初期に感染した患者さんを入院隔離させて、それ以上、感染拡大をしないように対応します。しかし、ある一定以上の患者さんの感染が確認され、どのように感染したかの調査もできなくなると、方針が変わって重症患者さんを中心に入院として、軽症の場合は自宅待機となります。

この時期になると、多くの発熱患者さんが医療機関を受診することが予想されます。こうなると限られた医療資源の中で困難な対応を迫られることになります。ベッド、抗ウイルス薬(タミフル・リレンザ)、人工呼吸器などの?物?の不足と、?人?の不足です。どの職場でも自分が感染するだけではなく、家族が感染して看病する、幼稚園や学校が閉鎖となって面倒を見る、などで4割近くの職員が出勤できなくなると考えられています。短い期間に大勢の患者さんが発生すると、社会機能の低下も考えなくてはなりません。

そのため、この大流行のピークをできるだけなだらかにすることができれば社会的な影響を少しでも小さくできるのではないか、と考えられています。「新型インフルエンザ」ワクチン(パンデミックワクチン)の製造の時間もかせぐことができます。

いかに予防するか、いかに広げないか、ということが重要となります。「新型インフルエンザ」の感染経路は咳やくしゃみなどのしぶき(飛沫)を吸い込んだり、これらの飛沫がついた手で口・鼻などに触れることによると考えられています。対策としては、(1)咳やくしゃみをする時には口を手やハンカチで押さえる、マスクをすること―「咳エチケット」(沖縄でもマスクを見かけることが多くなりました)(2)こまめに手を洗うこと(3)流行期には人が大勢集まる場所には行かないこと―などです。気がつかずに自然と手で顔や口を触っている人は多いものです。「新型インフルエンザ」も数年後には通常の季節性のインフルエンザとなります。初期の対応次第で影響が大きく変わる可能性があります。

今の時期からこれらの予防策を、小さいお子さんからお年寄りの方まで、多くの人が習慣としてできるようにしておくことが大切です。

風評に惑わされず、冷静に対応するためには、正しい知識(『知識のワクチン』という言葉があります)と予防策の確実な実行にあります。