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動脈硬化症(2009年3月31日掲載)

仲里 淳・県立中部病院

無症状で進行 心疾患も

日本人の死因の第1位は悪性新生物(がん)、2位が心疾患、3位が脳血管障害となっており最近ではCMでもよく耳にします。この中で注目して頂きたいことは、心疾患と脳血管障害の多くは、動脈硬化症が原因となって起こっていることです。

そのため、動脈硬化症の初期段階で発見できれば、死に直結する疾患にならなくてすむとお考えになるかと思われます。しかしながら、動脈硬化症は初期段階では症状がなかなか出ないため、早期発見することが難しいのが現状です。

現在では、動脈硬化症を早期発見するために、さまざまな検査が行われております。その中で、簡単にできる検査としては、脈波速度検査があります。脈波とは、心臓から押し出された血液により生じた拍動が血管を通して手足に届くまでの速度のことで、血管が硬いほどその速度が速くなります。

また、同じ検査で足関節上腕血圧比(ankle?brachial pressure index : ABI)が測定できます。この検査は、腕の血圧と足の血圧を比較することで、閉塞性動脈硬化症(ASO)かどうかが分かります。ASOとは、下肢の動脈が狭窄または閉塞することによって、痛みや冷感、しびれといった症状が起こる病気です。また、間欠性跛行といって、一定の距離を歩くと足に痛みやしびれが出て、しばらく休むと痛みがとれてまた歩けるようになるということを繰り返す症状があります。

間欠性跛行がある方を5年間調査したところ、下肢切断に至った例は4%、5年間の死亡率は30%でその死因の70%が冠動脈疾患や脳血管疾患だったという報告があります。また、ASOがある方のうち、60%に冠動脈疾患や脳血管疾患の合併があるとも言われていて、ASOが疑われる方は、積極的に精密検査が必要です。

われわれの施設でも、ABI検査で陽性と判定された場合、血管エコーやコンピューター断層撮影(CT)、磁気共鳴画像装置(MRI)、冠動脈造影検査などを行い、積極的に検査を行っております。検査の結果、冠動脈狭窄病変や頸動脈狭窄病変が見つかり、動脈カテーテル治療やバイパス手術、頸動脈内膜剥離術などが必要となる方が多数いらっしゃいます。

動脈硬化症は無症状に進行し、気がついたら重大な病気にかかっていたともなりかねません。少しでも気になる症状がありましたら、かかりつけ医またはお近くの医療機関に相談され、検査を受けることで、早期発見、早期治療につながるかもしれません。