沖縄県医師会 > 健康の話 > 命ぐすい・耳ぐすい > 命ぐすい・耳ぐすい2009年掲載分 > 元気のもとホルモン

元気のもとホルモン(2009年3月17日掲載)

濱元 誠栄・県立宮古病院

体調整える甲状腺の機能

ノドボトケの下、首のまん中あたりに、甲状腺という一般的にはあまり知られていませんが体の中で大事な役割をはたしている臓器があります。甲状腺は小さくて平べったい上に柔らかく、また首の筋肉に囲まれているため見た目には分かりませんし触ってもまず分かりません。しかし甲状腺の病気のほとんどは甲状腺が大きくはれてくるので、触ることができたり目でみても分かるようになります。

甲状腺はホルモンを作るはたらきをしています。甲状腺から作られる甲状腺ホルモンは体の元気のもとになるホルモンなので、甲状腺は体の元気を調整しているものだと考えてください。甲状腺の病気には、ホルモンのバランスが悪くなる病気と腫瘍といったしこりができる病気の2通りがありますが、今回はホルモンのバランスが悪くなる病気の話をします。

甲状腺ホルモンがたくさん作られる病気は甲状腺機能亢進症と言い、主にバセドウ病と呼ばれています。動悸、汗かき、たくさん食べるのにやせる、手の指のふるえや麻痺、疲れやすい、暑がり、イライラして落ち着きがないといった症状がみられますが、これらは体が元気になり過ぎている状態と考えると分かりやすいかもしれません。軟便、不眠症、月経異常がみられることもあり、眼がとび出したような顔つきになることもあります。これらの症状は薬でホルモンを抑える治療でほとんど治りますが、手術や放射線といった特別な治療が必要になることもあります。

また、甲状腺ホルモンがあまり作られなくなる病気を甲状腺機能低下症と言います。これは体の元気がなくなる病気なので、元気のないような症状が出てきます。例えば、だるい、食欲がない、寒がり、汗が少ない、むくみといった感じです。ほかにも脳のはたらきも落ちて物忘れがひどくなったり、無気力、うつになったりしますので、精神科の病気や更年期障害、認知症と間違われることもあります。便秘や月経異常などがみられることもあります。これらの症状は少なくなったホルモンを薬でおぎなうといった治療でよくなります。

元気のもとホルモンのバランスがおかしくなっているかもしれないと思った方や、鏡でじっくり自分の首をみたり触ってみて甲状腺がはれているかもしれないと感じた方は、近くの病院で一度甲状腺を調べてみてください。