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頚動脈エコー(2009年3月10日掲載)

旭 朝弘・那覇市立病院

簡単・無害に「硬化」検査

動脈硬化という言葉は多くの方が聞かれたことがあるかと思います。動脈硬化は、動脈の壁が厚く、硬くなることです。進行すると血管の中が狭くなったり、また、突然つまったりします。心臓の筋肉を養う冠動脈という血管にそれが起こると狭心症や心筋梗塞となり、頭の血管だと脳梗塞ということになります。

人は、年をとるに従って動脈硬化は必ず起こってきますが、高血圧、糖尿病、高脂血症(コレステロールが高い、中性脂肪が高い方)、高尿酸血症、肥満、喫煙者、メタボリック症候群などの生活習慣病がある方は、年齢以上に動脈硬化が進行してきます。初期の動脈硬化を採血やエックス線検査でとらえることは困難です。動脈硬化を調べる簡単な方法が頚動脈エコー検査です。最近は健診や人間ドックでもよく見かけます。

エコー検査は、超音波という人体に無害の音の波を使って体の中を調べる検査法です。あおむけに寝た状態で枕を外し、首の部分に、ゼリーを塗り探触子をあてて、検査をしていきます。検査は、主に左右の頚動脈という首の太い動脈をみていきます。だいたい15分から20分ほどで終了します。

血管壁は3層に分けられますが、第1層と第2層を内膜中膜複合体(IMT)と呼び、その厚さを計ります。IMTは年齢と共に増加します。左右の数カ所でIMTを測定し、その平均を求めると、ご自分の血管年齢が分かります。IMTの厚さは通常1ミリ未満です。1ミリを超えると動脈硬化が示唆されます。1ミリを超える限局性の壁の隆起をプラークと呼びます。頚動脈IMT、プラークは、高血圧や糖尿病などの生活習慣病があると増加していきます。

頚動脈は、体の中の一部分ではありますが、頚動脈エコー検査は、全身の動脈硬化の指標とされています。実際、狭心症の患者さんは、狭心症のない患者さんに比べて、頚動脈IMTやプラークがより増加しています。また、頚動脈プラークが血管壁からはがれて、その先の脳血管がつまってしまうと、脳梗塞が起こってしまうこともあるため、脳梗塞の危険性を評価することが出来ます。

頚動脈エコー検査は、簡便で無害であることにより繰り返し何度でもできます。それを利用して、高血圧や高脂血症などの治療が適切かどうか、また実際に動脈硬化の進行が阻止できているかを知るために有効です。生活習慣病をお持ちの方は、1度頚動脈エコー検査を受けてみてはいかがでしょうか。