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未成年とたばこ(2009年2月25日掲載)

奥間 裕次・松原クリニック

「吸えない」環境づくりを

医師が「…では塩分を控え、禁煙を」「…腹八分目に、そして禁煙を」「脂物を控え禁煙を」「…辛い物、刺激物を控え、禁煙を」「人込みは避け、禁煙を」「軽い運動、適度のアルコールに、禁煙を」。患者さんが「…は何とかできそうですが、ただ禁煙はちょっと難しいです」。診察室でよく聞かれる会話があります。

ある調査では喫煙者の約八割の方が禁煙をしたい、一方、成人喫煙者の多くが二十歳前で喫煙経験者であるとの報告もあります。多くの方がやめるのが難しいので、吸い始めなければ良かったと話すのを聞きます。たばこにはニコチンという依存性の強い物質があり、吸い始めるとなかなかやめられないのが現状です。

そのたばこが原因の病気で日本では一年間に約十万人、世界では約五百五十万人が命を落としています。時間当たりにすれば約八秒に一人、世界のどこかで命を落としていることになります。

私は地域の校医で毎年、学校に出掛けたばこの害について児童に講演をしています。講演後の感想は「こんなに体に害がある事を知らなかった」「大人になったら吸ってみたいと思っていたが、今日の勉強会で大人になっても吸わないと決めた」というのが大半を占めます。一部、「お父さんにやめてもらいたい」と言う感想を書く児童もいます。

ところで小学校五年生の喫煙経験者率は県北部地域、沖縄県、他府県、日本全国でどこでも10ー15%です。また中二では25%前後となります。都会、地方を問わずほとんどがその数字となります。そして喫煙のきっかけは「なんとなく」「興味があった」「友達にすすめられた」など、単純な動機がほとんどです。

家の灰皿にあった消されたたばこをいたずらでくわえ、小学高学年で背伸びをして友達同士でふざけて、中学から喫煙常習者となった子も多いです。こう言う話を事あるごとに保護者、教育関係者に講演をするとがくぜんとする方が多いのが現状です。

いかに安易にたばこが手に入りやすい環境に子どもたちが居るかが分かります。目の前の児童・生徒がニコチン依存症に将来ならないためには、私たち大人がたばこの害を教え、また子どもたちが安易にたばこに手が届かない環境を整えることが肝要と思います。

八秒に一人の犠牲者にならないためにわれわれ大人が率先して子どもたちに「吸わない知識」「吸えない環境」を提供できるかが大切だと思います。