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「貯筋」のススメ(2009年2月11日掲載)

照屋 勉・てるや整形外科

ロコモ対策で健康長寿

 日本整形外科学会が提唱した「ロコモティブ・シンドローム(運動器症候群)」…ご存じでしょうか? 「運動器」の障害により介護のリスクが高まった状態を、ロコモティブ・シンドローム(ロコモ)といいます。高齢化により、バランス能力や移動・歩行能力が低下し、閉じこもりがちになり、転倒するリスクが高まった状態の「運動器不安定症」も、このロコモに含まれます。

 最近、全国的に認知されている「メタボリック症候群(メタボ)」は、肥満をベースとして、高血圧・糖尿病・高脂血症のそれぞれが低リスクでも、全体として高リスクになるとしています。ロコモでは、骨粗しょう症・変形性の関節症・脊椎症性の脊髄および神経根障害の三つの症状が、相互に関連して移動・運動の障害になりうるとしたわけです。

 人間は、体を動かすこと(運動)を通して、日常生活を行い、仕事・勉強・スポーツを楽しむことができます。そこで、「運動器(骨・関節・筋肉・靭帯・神経など)」。中でも、とりわけ「筋肉」。

 実は、人間のすべての臓器・組織(目・耳・心臓・肝臓・骨・皮膚・神経など)の中で、年を取っても鍛えることができるのは、「筋肉」だけなのです。可能な限り筋肉トレーニングを励行し、「貯筋」を続けることで、有意義な「健康寿命(平均寿命ではありません!)」を謳歌し、N・N・K(ねんねんころり!)ではなく、P・P・K(ぴんぴんころり!)と天寿を全うしたいものです。

 ところで、今、「沖縄県民の肥満」が大きな問題になっております。個人的な意見ですが、四十歳からの特定健診(通称「メタボ」健診)を、ぜひ二十五歳からにしてほしいと考えております。

 二十歳前後の?フレッシュマン?は、お手ごろな食べ放題・飲み放題の店に通って、どんどんメタボになっていくそうです。その若者たちに、二十五歳からのメタボ健診に出向いてもらい、肥満対策の重要性を分かっていただく必要性があると考えております。二十五歳の食欲旺盛で運動不足の若者たちは、十五年後、限りなくメタボになるであろうと想像できます。

 そこで、「メタボ健診」も勧める、「食事療法」も勧める、「運動療法」も勧める。「メタボ対策」と「ロコモ対策」。「食育」と「貯筋」。こういう流れが、長寿県復活の揺るぎない「県民運動」となることを切に切に願っております。