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パーキンソン病(2009年2月4日掲載)

眞弓 博光・かなさん内科クリニック

薬の「さじかげん」の妙

私は、一九九八年、妻の生まれ育った沖縄に勤務医として来沖して以来、沖縄の空と海のまぶしさ、風の香りと心地よさ、そしてなんといってもウチナーンチュ、おじい、おばあの懐の深さ、子どものころ感じた人のぬくもりに癒やされ元気をもらっています。そんな沖縄は、皆さんもご存じの通り、百歳以上の高齢者の割合や女性の平均寿命が全国一位の長寿県です。

そこで、ちょっと気をつけて周りを見渡してみると、次のような人に出会ったり、あるいは自分自身に心当たりがあったりしませんか?

力をぬいてリラックスして話をしている時、片側の手足や体が震えたりするが、力を入れると止まる(ただし逆に力を入れると震えることもある)、ちょっと前かがみになって小刻みに歩く、動作がなんとなくスローになっていたり、細かい手作業(はしの使い方やボタンの掛け方)が拙劣になっている、最近表情が乏しくなってゆっくり話す、すくみ足といって歩こうとすると第一歩がなかなか出ない、などなどです。

こういう症状を年のせいだと思ってほっておいてはいませんか? パーキンソン病の症状が出ている場合もあるので注意が必要です。

パーキンソン病は、日本では人口十万人につき百―百五十人(欧米では百五十―二百人)の割合でみられ、発症年齢のピークは五十―七十歳くらいで、高齢者になるほど発病率が増加します。例外的に二十歳代で発症する人(四十歳以下で発症するものは若年性パーキンソン病)や八十歳を超えてから発症する人もいますが、男女の発生頻度はほとんど同数です。

この病気の原因は、脳内の黒質という部分の神経細胞の数が減ることです。この神経細胞は、ドーパミンという神経伝達物質を産生しているので、結果ドーパミンの量が減ることになり、黒質の神経細胞の数が若年正常者の20%以下に減ると上記のような症状が出現するといわれています。しかしなぜ神経細胞の数が減るのかはよく分かっていません。

主たる治療法は内服治療です。内服薬には作用する部位により、大きく分けて七グループあり、症状に合わせていろいろな薬の組み合わせが考えられます。いわゆる「薬のさじかげん」が不可欠で、専門の神経内科医の診察・治療が必要になります。

このような症状のため、人前に出るのが嫌で徐々に引きこもりになったり、親しい友人とも疎遠になったりすることも多く見られます。専門の神経内科医の適切な治療を受け、沖縄の自然のように少しでも明るく前向きな日々の生活を送れたらと思います。