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子宮体がん(2009年1月28日掲載)

武田 理・ハートライフ病院

急増中 不正出血は受診を

ちまたで行われている子宮がん検診のほとんどは子宮頸がん(以下頸がん。子宮の入り口のがん)ですが、近年増えているのが子宮体がん(以下体がん。子宮の奥にできるがん、子宮内膜がんとも呼ぶ)です。

地域がん登録全国推計値の罹患データでは、この二十年間に体がん罹患率が四倍以上に上昇(二〇〇〇年のデータでは罹患数五千六百人、死亡数千百三十九人でその後も増加)しています。体がんの好発年齢は五十歳代が最多で六十、七十歳代と続き、頸がんより高齢者に多く発症します。

発がんの機序は年齢層により二型に分けられ、閉経後の比較的若い年代では女性ホルモンのエストロゲンが子宮内膜を厚くし、そこからがんが発生します。具体的には四十歳後半からの年代で排卵障害や月経不順の方、妊娠出産経験の少ない女性、乳がん、糖尿病患者、肥満(食生活の欧米化も関与)などが体がんの危険因子です。一方、より高齢者での発がんはホルモンとは関係なく、原因がまだよく分かっていません。

体がんの症状は月経以外の出血や褐色の帯下で、頸がんでは出血した時にはがんが進行している場合が多いのに、体がんでは早期でも出血があるため発見が比較的早いのが特徴です。内膜組織検査で診断し、治療は手術を行って子宮、卵巣やリンパ節を摘出し、再発の危険が高い場合は化学療法や放射線などの追加治療を行います。

さて体がんの検診ですが対象は最近六カ月以内の不正性器出血、月経異常、褐色帯下などの症状のある方です。検診方法は頸がんほど簡単ではなく、子宮腔内へ器具を挿入して内膜の細胞を採取します。頸がん検診ではほぼ痛みがないのに体がん検診時は多少の痛みがあります。

高齢者では子宮が萎縮し器具が腔内へ十分に挿入できず内膜の細胞が十分とれない場合や検査結果について異常の判断がやや難しいなどの問題があります。その上患者数がもともと少なかったこともあって体がん検診は一般化せず、体がんに対する一般の方の知識、情報も不足しがちです。

実際に不正出血から一年以上経過して受診する患者さんもよく経験します。体がんの危険因子を考慮すると今後も増加する可能性があり、是非子宮体がんの存在を知って、出血のエピソードがあれば必ず診察を受けることをお勧めします。ただし出血=がんではなく、出血の原因は子宮筋腫、ポリープ、ホルモン異常や膣の炎症等、がん以外の原因の方が圧倒的に多いので受診に際して過度の不安を抱かないようにしましょう。