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子どもの便秘(2009年1月14日掲載)

譜久山 滋・県立南部医療センター・こども医療センター

食生活改善と排便習慣を

赤ちゃんの排便は、生まれてからしばらく授乳や食事のたびに起こる反射的なものですが、平均で二歳半ごろまでに意識的な排便調節ができるようになると言われています。何げないこの行為は、実はいくつもの神経と筋肉の連携が必要な、非常に高度で複雑な仕組みで成り立っているのです。

小児期の排便異常、特に便秘で困るお子さんの頻度は比較的高く、一歳ころより始まることが多く1―3%に見られると言われています。この中には、まれに外科的な治療が必要な疾患もありますが、大部分の慢性便秘症ははっきりとした腸の病気があるわけでは無く起こるといわれています(アメリカのある統計では95%)。

何らかのほんのささいなきっかけ(たまたま便が硬く排便のとき痛かった・トイレが遠くて怖い・排便をからかわれたなど)で排便を我慢する、あるいは繊維分の少ない食事で便が少ないなどで、それが習慣的になってしまうと、少しずつ直腸に便がたまり直腸は伸展、その積み重ねで程度が強くなると直腸の知覚が低下・消失し、ますます便がたまる、という悪循環を繰り返してしまいます。

こうなってしまうと直腸は大きく広がり、硬い固まりとなってしまった便のすき間から、やわらかい液状の便がすりぬけて便のお漏らしをしてしまうこともあり、本人の心面にも大きな影響を及ぼしかねません。たかが便秘とは言っていられないのです。

腸の病気が隠れていないかの判断は大事ですが、大部分ははっきりとした病因は無く、ゆっくりと病態が出来上がっていきます。その分、治療にも時間がかかることが多いです。まずは、かん腸・緩下剤などにより、直腸内の便を減らしていきます。便の再貯留を防ぐため、繊維成分の多い食事や水分・乳製品などを多めにとることを心がけます。

たとえ排便がなくても、十分くらい毎日トイレに座る習慣をつけます。毎朝ご飯の後に、お母さんがそばで一緒にいきむ動作をしてみる、自排便ができた日はカレンダーに印をして褒めてあげるなどの工夫も継続する励みになります。

正常の便回数の定義はありませんが、排便回数が週三回以上、便を漏らすことがなくなり、薬の投与を中止しても問題なく定期的に排便ができるようになることが目標です。改善までの期間は六―二十四カ月かかるとも言われています。お子さま本人と保護者の方の根気強い協力がとても重要です。