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乳幼児の耳あか(2008年12月31日掲載)

大城 達男・県立南部医療センター・こども医療センター

そうじは入り口部を適度に

最近、外来や乳児健診を行っていると、よく「耳のそうじはどうすればいいですか?」「毎日したほうがいいですか?」と質問されます。われわれ医療者もかつては耳あかには役割がないものととらえ、除去することが当たり前だと考えていました。しかし近年、耳あかにも役割があることが分かっています。

そもそも耳あかとは、外耳道の皮脂腺から分泌された分泌物に、外耳道表皮の角化脱落細胞やごみなどが混じったもので(いわゆる皮膚のあかと同じようなもの)、ジメジメした湿性耳あか(あめ耳)と乾性耳あか(こな耳)があります。

その機能としては、浄化・殺菌作用があるほか、敏感な外耳道を保護し、潤滑する役割があることが分かっています。したがって、本質的には耳あかは有益なものなので、通常は耳かきをしなくても、余分な耳あかは自浄作用やあごの運動によって自然に耳から排出されるようになっています。

しかし、乳幼児ではその分泌量が多く、往々にして湿性の白色の耳あかに遭遇します。特に向き癖があり、いつも頭部の下側になるほうの耳にこのような湿潤した耳あかがよくみられます。したがってそのような場合は、お風呂後などに綿棒で外耳道の入り口部を軽くきれいに掃除してあげるだけでよく、定期的な耳かきなどの耳そうじは必要ありません。それどころか、耳かきをすることで耳あかを耳の奥に追いやってしまったり、傷をつけて炎症(外耳炎)を起こしてしまうこともあり、注意が必要です。

しかし過剰な耳あかがあるとさまざまな障害を引き起こしてしまうことも、また事実です。

過剰な耳あかにより外耳道を閉塞してしまうと、耳の聞こえが悪くなることもあり、耳のかゆみや痛み、耳鳴りを生じてしまう人もいます。さらに、耳あかそのものが害になることはなくても、その奥に隠れている中耳炎(外耳炎とは根本的に異なります)などの発見が遅れてしまうこともあります。そのため耳そうじは全く必要ないというわけでもありません。

結論としては、耳あかは外耳道の外側三分の一で作られて、自然に排せつされるものですから、「強くやらない」「しょっちゅうやらない」を基本に、月二―三回程度、耳の入り口に出てきたものだけをとればよいでしょう。

お子さんが暴れてそうじすることが不安だったり、明るいところで見て、耳穴が耳あかで栓をされている時は、耳鼻科を受診するようにすればよいでしょう。