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鼻の手術最先端(2008年12月17日掲載)

長谷川 昌宏・琉球大学医学部付属病院

カーナビ原理 安全性向上

皆さんご存じのカーナビ(自動車経路誘導システム)の普及率は全国平均で40%くらいだそうですが、沖縄県は2―3%と低いようです。ちなみに私もつけていません。沖縄で生活していて、道に迷うことはほとんどありませんから必要性を感じません。でも慣れない県外に出掛け、運転となると不安なので、レンタカーには必ずカーナビをつけてもらいます(最近は初めからついていることが多いですね)。

さて、最先端の鼻手術の一つにナビゲーション手術があります。これはカーナビと同じ原理で「目的地」の病巣部と、「現在地」の手術器具の先端を、頭蓋骨・顔面骨の「地図」に映し出して、手術している位置を確認しながら手術を進めるものです。普通の鼻手術ではあまり必要はありませんが、再手術や病気で鼻内の形が変化している時(知らない土地で車を運転するようなものですね)にはこのナビゲーションシステムが力を発揮します。

ナビゲーション手術は初めは脳神経外科の分野で導入され、耳鼻咽喉科や整形外科の手術に導入されてきています。呼吸で動く内臓と違い、頭蓋骨に覆われた頭部・顔面・鼻副鼻腔は画像表示の誤差が小さく、一ミリ以下です。

いわゆる「蓄膿症」といわれる副鼻腔炎の手術は、かつては上唇と歯茎の間を切開する大がかりなもので、患者さんは手術後数カ月間、顔の腫れ、傷の痛み、切開部付近のしびれに苦しむことがありました。

一九九〇年以降はどこも切開することなく、鼻の穴からカメラ(内視鏡)と手術器具を入れ、画面を見ながら手術を行う内視鏡手術が主流になってきました。この方法ですと、出血や痛みが少なく以前の手術方法より早く回復できるようになります。

しかし、内視鏡手術にも問題点があります。テレビ画面の画像は平面的で、立体感がないため通常では大丈夫ですが、鼻内の形が大きく変形している場合には周りの大事な臓器(例えば目や脳など)を傷つけてしまいやすいのです。ナビゲーションシステムは、通常の鼻手術全例に使用するわけではありませんが、再手術の方や危険部位の周囲に手術操作が及ぶ場合に使用することで安全・確実な手術をすることができます。

今年の四月から「先進医療技術の保険導入」が始まり、このナビゲーションシステムを用いて鼻や耳の手術を行ううことができるようになりました。今後は、このナビゲーションシステムを用いた安全な鼻手術の選択と需要が増加してゆくものと思います。