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性同一性障害(GID)(2008年11月26日掲載)

山本 和儀・山本クリニック

悩みあれば精神科受診を

男性と女性。最近の研究によれば、私たち人間の性はまず、性を決める染色体XとYのうち、Y染色体上にあるSRY(精巣決定)遺伝子が有るか無いかによって決められと言う。

Y染色体をもつ胎児(XY)では、受精後八週ごろに精巣が作られ、男性ホルモン(アンドロゲン)が分泌されてペニスなど男性型の外性器が作られ、思春期になると筋肉や体毛の発達、声変わりなど男性的な特徴をもたらす。

Y染色体をもたない胎児(XX)では精巣が作られず、受精後十二週ごろに卵巣が作られる。外陰部が女性型となり、思春期になると乳房や皮下脂肪の発達などにより女性らしい体つきとなる。

また自らの性を男性、あるいは女性として認識する心の性(ジェンダー)の自己意識は、胎生五カ月ごろから胎児の脳にアンドロゲンが影響を及ぼすことや出生後の社会や文化の影響などにより決まっていくと考えられている。

人間の性の分化発達は微妙なプロセスであるため、遺伝的性と身体の性(セックス)が違う場合や両性の特徴を併せもつ半陰陽(インターセックス)、身体の性と心の性が一致しない性同一性障害(Gender Identity Disorder 略してGID)など、本人や家族を悩ます深刻な事態が起こることがある。

欧米の報告では、身体的性は女性だが性自認が男性のいわゆるFTM(Female to Male)が十万人に一人、身体は男性だが性自認は女性のいわゆるMTF(Male to Female)が三万人に一人見られるとのことである。私のクリニックを受診した患者さんの数はこの四年ほどで百五人に上り、うちFTMが七十九人、MTFは二十六人であり、欧米の報告よりも多い。

日本精神神経学会は、性同一性障害の診断と治療に関するガイドラインを一九九八年に公表しており、医学的適応があると判断された場合には、ホルモン療法や性別適合手術(SRS)を受けることができる。また二〇〇二年からは戸籍の性別変更を行えるようになった。このような一連の流れをカウンセリングしながら、本人の望む性の自己決定をサポートしてきた。

中には家族の理解や支援などにより、結婚までこぎつけた方もあるが、まだ医学界や社会の理解と支援は十分とは言えない。ホルモン療法や手術が医療保険の適用とならず、費用の安い東南アジアなどへの渡航を余儀なくされているのが現状である。自分の性意識や性の指向(どちらの性を好きになるか)に悩みや疑問を感じた場合は、精神科の専門医を受診することをお勧めしたい。