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耳管開放症(2008年11月12日掲載)

大田 重人・琉球大学医学部付属病院

体重急減・ストレス原因

鼓膜より内側の部屋を中耳と言います。この中耳と鼻とをつないでいるのが耳管です。通常は閉じていて、つばを飲んだり、あくびをすると開きます。

耳管の働きは次の通りです。

一、換気・調圧

飛行機で耳がふさがった感じになることがありますが、つばを飲んだり、あくびをすると治ります。これは耳管が開き中耳の換気、圧力解除がされたためです。

二、排せつ

中耳内の分泌物は耳管から鼻へ排出されます。排せつされないと「滲出性中耳炎」となります。

三、防御

鼻からの細菌が中耳へ入るのを防いでいます。また耳管が閉じていることで、自分の声が耳に直接響くのを抑えています。

「耳管開放症」とは、通常閉じているはずの耳管が開きっぱなしになり、不快な症状を引き起こすことです。

症状は、(1)自声強調(自分の声が響いて聞こえる)(2)呼吸音聴取(呼吸する音が耳に響く)(3)耳閉感(耳がつまった、水が入ったような感じ)。

悪化すると自声強調により相手の声が聞きにくくなったり、話しにくくなったりすることもあります。頭を下にしたり、横になったりすると症状が消えるのが特徴です。急激な体重減少(ダイエット、体調不良など)、ストレス、中耳炎の後遺症などが原因の一つといわれています。検査には問診、鼓膜所見、耳管機能検査があります。

問診…症状について正確な問診が必要です。聴力検査、鼓膜所見が正常の場合がほとんどで、異常なしとされることも多く、逆に耳管狭窄症と診断され耳管通気治療により症状がひどくなるケースもあります。

鼓膜所見…よく観察すると嚥下や呼吸と同時に鼓膜が動くのが分かります。また開放症をもつ人の中には鼻すすりによって自分で耳管を閉じることにより耳の症状をとる例があります。しかし鼻をすすると鼓膜がへこんだり、滲出性中耳炎を起こしたりすることがあり、最悪の場合、真珠腫性中耳炎の原因となることがいわれています。そのため、できるだけ鼻すすりはしないように指導されます。

耳管機能検査…耳管機能検査装置により実際の機能を測定します。

耳管開放による症状は軽症から重症までさまざまであり、自然治癒も多く、症状が軽度なら治療の必要はありません。漢方薬、生理食塩水点鼻、鼓膜テープ、耳管咽頭口処置など症状にあわせた治療が行われます。