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非定型うつ病(2008年11月5日掲載)

城間 清剛・城間クリニック

「気分屋」と誤解しないで

最近はうつ病への理解が深まり、体調を崩して、比較的早い時期に心療内科を受診する方が増えています。一方で、一般に知られているうつ病とは様子が異なるうつ病も増えてきているのが現状です。今回は、そういったちょっと異なる、誤解されやすい「非定型うつ病」についてお話します。

一般に知られているうつ病は、「メランコリー型うつ病」というタイプです。夜はなかなか寝付けず、朝早く目が覚めてしまって十分な睡眠がとれません。食欲もなく体重が減ってきて、元気がなく、暗い表情でいつも気分が沈んでいる、というのが典型的な症状です。

これに対して「非定型うつ病」は、いくら眠っても眠り足りない感じで、一日十二時間以上も眠ったり、病気になる前より妙に食欲が出てきたり、甘いものが欲しくなり食べ過ぎて体重が増えてしまいます。

メランコリー型は、状況に左右されることが少なく、いつもウツウツとしているのに対して、非定型は、うれしいこと、良いことがあると憂うつな気分がずいぶん良くなり元気になります。一方で嫌なことつらいこと、本人にとって都合の悪いことがあると、途端に気分がひどく沈んでしまいます。気分が沈んで調子が悪くなると、身体が鉛のようにだるくなって寝込んでしまう、と言った特徴があります。人間関係にもひどく過敏で、周りのささいな一言に驚くほど傷ついて落ち込んだり、被害的になったりします。

不安障害や不安発作を伴っている頻度も高く、時に怒り発作を表すこともあります。怒り発作のときには、友人の冗談まじりのたわいもない一言や外出先でのちょっとした出来事に対して、抑えきれない激しい怒りが出てきて、相手に怒りをぶつけてしまい、後からひどく後悔して落ち込んでしまいます。

周囲から見るとまったく、気まぐれでわがままにしか見えません。しかし、本人自身どうしようもない心と身体の症状です。さらに困るのは、この非定型うつ病には、一般的な抗うつ薬の効果が表れにくく、治療に長期間を要してしまいます。それでも何とか生活のリズムを整えつつ、根気強く治療を続けていくことで少しずつ回復していきます。

周囲の方々は、うつ病にはいろいろなタイプがあることを理解してください。一般的なうつ病と少々病気の様子が違うからと言って、うつ病ではない、やっぱり怠けているのだとは思わず、温かく辛抱強く見守ってあげてほしいと思います。