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便潜血検査(2008年10月22日掲載)

大嶺 靖・沖縄赤十字病院

大腸がん発見に効果的

検診でよく行われている便潜血検査とはどういうものなのか、ご存じですか。採取した少量の便に目に見えないような血が混じっていないかを調べる検査です。

最近では、人の血液中のヘモグロビンだけを検出する免疫法という検査法が用いられるようになっています。この方法は食物や貧血の薬などの影響も受けませんので、前日の食事制限も必要ありません。また、壊れたヘモグロビンも検出されません。胃や十二指腸からの少量の出血では長い時間をかけて腸内を通過する間にヘモグロビンが壊れます。そのため陽性になることは少ないと考えられます。

したがって大腸からの出血、すなわち大腸がんの発見に有用な検査と言えます。便潜血陽性者の1―2%に大腸がんが発見されています。便潜血検査を受けていると、大腸がんで死亡するリスクが60―70%減少すると言われています。

一方、大腸がんでも便潜血検査が陽性にならないことがあります(早期がんで50%、進行がんで10%程度)。それでも、死亡のリスクが減少しているということは進行がんで発見されても、大腸がんは治る可能性が高いがんだとも考えられます。もちろん早期がんの場合はさらによく、その五年生存率は90%以上です。

治療も患者さんの負担の少ない方向に進んでいます。早期がんの一部には内視鏡(いわゆる大腸カメラ)を用いて摘除できるものもあります。またこの数年で飛躍的に進歩しているのが、腹腔鏡下手術と言われる手術です。これまでの大きな切開を必要とした開腹手術と同等の手術が小さな傷で行えるようになっています。

合併症や再発に関しても従来の開腹手術に比べ劣ることはないと報告されています。当院の成績もこれらの報告とほぼ一致しています。傷が小さければ痛みも少ないし、見た目も大きい傷よりはいいわけですから、患者さんにとっては有益だと考えています。欠点は手技が難しいため、習熟するのに時間がかかることです。最近、一定以上の技術や安全性の確保を目的として技術認定医制度(日本内視鏡外科学会)というものが創設されました。より安全で質の高い腹腔鏡下手術が広まる下地になると思います。

日本でも大腸がんは増えています。食生活の欧米化(高脂肪食、低繊維食)が最大の原因と考えられています。野菜をたくさん食べ、たばこやアルコールを控えることは大腸がんの予防となります。

食べるものに気を付けることはもちろん大事ですが、時に排せつ物のチェックも必要だと思います。便潜血検査は大腸がんの発見の大いな助けになります。