沖縄県医師会 > 健康の話 > 命ぐすい・耳ぐすい > 命ぐすい・耳ぐすい2008年掲載分 > 予防接種のススメ

予防接種のススメ(2008年10月15日掲載)

知念 元恵・大宮病院

うまく利用し確実に予防

小児科医は、病気の子だけでなく、元気な子にも出会います。それは例えば、三カ月すぎの子が三種混合ワクチン(DPT)を受けに来てくれたときです。DPTはジフテリア、百日ぜき、破傷風の三つの病気を予防するワクチンですが、これを予防接種デビューとされる方が多く、親も子も初々しいものです。

一通りの説明の後、私は市町村の集団接種の予定表を参考に、その子の成長に合わせたオーダーメードの予防接種計画を立ててあげることにしています。予定はその後、たいてい風邪や発熱などで変更に変更を重ねることになりますが、その作業もかかりつけ医の腕の見せどころです。

そんな小さかった子が無事一歳になり、麻疹(はしか)・風疹混合(MR)ワクチンを受けに来てくれたときはとりわけうれしいものです。「一歳おめでとうございます」というあいさつから始まります。家族からは、誇らしい雰囲気が伝わってきます。当事者の多くは泣いたりしていますが、それも人見知りをする賢い子に成長している証拠なのです。もちろん泣いていない子もいます。しょっちゅう風邪をひいては通院し病院に慣れっこになってしまった子で、その家族からは「やれやれ、やっとこぎつけたぞ」という一種の安堵感のようなものが伝わってきます。それもまた良いものです。

病気の子を診るのも小児科医の仕事ですが、病気にかかりにくい子に育てていくお手伝いをするのも、大切な仕事だと思っています。「病気を予防するにはどうしたら良いのですか?」とよく聞かれます。手洗い、うがい、適度な休息、規則正しい生活習慣、バランスのとれた食事。そして、予防接種です。

予防接種で防げる病気は確実に防ごうという考え方があります。予防接種には、その病気にかかりにくくなり、かかったとしても重症化を防ぐという意味があります。さらに集団で抵抗力をつけることで、病気の流行を防ぎ、アレルギーなどで予防接種が受けられなかった人までも守るという社会的な意義もあります。確かに副反応の問題もあるので、一人一人体調を診ながら注意深く行い、問題が発生した際には速やかに対応しなければなりません。

細菌やウイルスによる病気は数多くあり、その中で予防接種で防げるものは限られています。しかし例えば麻疹のように重大な病気だからこそワクチンが開発されてきたという歴史的な背景があります。予防接種を上手に利用し、防げる病気は確実に防ぐことで、子どもの健やかな成長に役立ててもらいたいと願っています。