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食道がん(2008年10月8日掲載)

小川 和彦・琉球大学医学部付属病院

放射線と抗がん剤で効果

食道がんは食道の内面を覆っている粘膜の表面にある上皮から発生する難治性の悪性腫瘍です。早期の食道がんの症状は、食べ物が通過する時に胸がしみる、圧迫されるなどの軽微のことが多いのですが、約半数の方は無症状です。それに対して進行した食道がんでは、多くの方が食べ物を飲み込みにくい、体重減少という症状が出現しています。

食道がんに対しては、従来から手術が行われてきましたが、手術以外の治療法の一つとして放射線治療があります。一般的な治療法はエックス線を体の外から照射する外部照射で、照射時間は一回五―十分程度で週五日六―七週を続けるやり方が主になっています。通常では手術が難しい臓器の機能が低下している方や全身状態があまり良くない方でも、放射線治療を行うことができます。

最近、放射線治療と抗がん剤治療を同時に行う方が放射線治療だけを行うより効果があることが分かってきました。また、放射線治療に抗がん剤治療を加えることで手術をしなくても治る患者さんが増えてきています。手術ができる方に対しては、手術に近い率(約七―三割、病気の進行状態により治り方が違う)で治すことが可能であり、手術ができないような進行している方でも遠隔転移がなければ約二割程度の方を治すことができる可能性があります。

しかしながら、放射線治療に抗がん剤治療を同時に行う場合には、放射線治療単独よりも副作用が強くなってきます。副作用には、身体のだるさ、食欲低下、嚥下時の疼痛・嘔気・嘔吐などがあります。また、放射線による皮膚炎や食道炎も出てきます。血液障害としては、白血球や血小板が減少することがあります。症状が強い場合は症状を和らげる治療をしますが、時期がくれば自然に回復します。

食道がんは男女比が六対一と男性に多く、五十歳代以降の方に多く発症します。また、喫煙と飲酒が大きなリスク要因とされており、頭頸部がんの既往、熱いものを飲んだり食べたりする食習慣や胃・食道逆流症などでもリスクが高くなるとされています。これらの危険因子を持つ方や食道の症状がある方はできるだけ定期検査を受けることをお勧めいたします。

しかしながら、食道がんにかかってしまった場合は食道がんを専門にしている病院(外科や放射線科)に相談してください。病気の状態・体の状態を考えたできるだけ良い治療法をしていただくのが食道がんを治す近道です。