沖縄県医師会 > 健康の話 > 命ぐすい・耳ぐすい > 命ぐすい・耳ぐすい2008年掲載分 > 廃用症候群

廃用症候群(2008年9月24日掲載)

山口 健・沖縄リハビリテーションセンター病院

リハビリの開始 早めに

「うちの家族が病気で入院して、治療は済んだけど長い間寝ていたら、歩けなくなった、床ずれができた、元気がなくなった、ご飯も自分で食べられなくなった、なんだかボケちゃったみたい…」。なんてことはありませんか? これらは入院の原因となった病気の症状の一つかもしれませんが、もう一つ「廃用症候群」を起こしているかもしれません。

これは病気による安静・が原因で体が衰えた状態です。つまり身体を使わない、動かさないことが原因で手足や腹筋、背筋といった胴体の筋力の低下や、関節の拘縮(硬くなること)、皮膚の血流の低下、意欲や精神活動の低下が起こってしまうのです。骨ももろくなり骨折しやすくなります。高齢者やもともと何らかの障害がある人に起こりやすいとされています。臥床 ではこんなことにならないために、何が必要でしょうか? 大きな病気やけがなどで少しでも体を動かすと命が危ないという場合は別ですが、ベッドの上に寝かされていても、たとえ意識がなくても、体には「動かしてよい、触ってよい部分」があることが多いのです。家族や親近者が主治医の許可を得て手足をもむ、動かす、話し掛けることは大切なことです。これがリハビリテーション(リハビリ)の第一歩。

それでも、ベッドにいる時間が長くなればなるほど廃用症候群は進行します。そしてあまりに進行すると治らない障害になってしまいます。ですからできるだけ早くリハビリを始めることが大切です。リハビリは身体の麻痺や関節の拘縮などの「起こった障害」を「治療」するためだけではなく、廃用症候群という「起こりうる障害」を「予防」することも可能です。

一般的に病院では手足や体、言葉や飲み込みなどについてそれぞれの専門職がさまざまな医学的リハビリを行います(病院の設備や人員にもよります)。廃用症候群を予防し、なおかつ病気による障害を治療するためにもリハビリは重要です。病気やけがが治っても、廃用症候群のために座れない、歩けない、食べられない、認知症、床ずれ、肺炎などの症状が起こっては寝たきりの原因になってしまいます。

すべての障害をリハビリで治療することは残念ながらできないかもしれません。しかし、予防できる障害は予防してできるだけ元気に、再び日常生活が送れるようになることが大切です。リハビリの開始はお早めに。