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アスピリン(2008年9月17日掲載)

岸本 信三・県立南部医療センター・こども医療センター

虚血性疾患の予防に有効

血液がサラサラになります、という響きの良い言葉は、新聞や雑誌の健康食品の紹介でよく見かけますが、解熱鎮痛剤として知られるアスピリンは、実はそのような効果を有する薬の代表です。この薬は値段が安い、解熱鎮痛効果がある、に加え血小板の働きを抑える作用(抗血小板作用)を有しています。日本人のおよそ五百万人以上、米国では数千万人の人が服用しているとされています。

さて、この薬がこれほど服用される理由はなぜでしょう? 日本人の死因の一位は悪性新生物(がん)ですが、二位は心疾患、三位は脳血管疾患で、共通する原因は、虚血性疾患なのです。虚血性とは、血管が狭くなり、血小板が血液を固め(血栓形成)、血流減少により臓器の機能が低下してしまう状態です。

例えば、脳梗塞では、手足が動かない、言葉がもつれるなどで、心筋梗塞では胸痛や息苦しさなどの症状が見られます。これらの病気では再発の危険が高いため、その予防が重要で、抗血小板剤であるアスピリンが用いられます。アスピリンは、血小板の働きを抑え、血液をサラサラにしてくれるのです。心筋梗塞や脳梗塞の患者さんの多くにアスピリンが処方されていることと思います。

ところが、この薬には少数の人において、胃や十二指腸粘膜がただれてしまうこと(消化性潰瘍)があり、時には出血を起こす副作用があります。その頻度は報告により差がありますが、消化性潰瘍は数%から40%程度、出血は1%から数%とされています。

副作用の症状は薬の飲み初めのころに生じることが多く、胃のもたれ、食欲低下、胸やけ、吐き気、胃痛、便が黒くなるなどの症状です。また、頻度は少ないのですが、痛みなどの症状がなく突然、血を吐く、血便が出る、ふらつくなどの症状で始まることがあり、そのような場合は、持ったなしで救急病院を受診ください。

アスピリンの服用においては、消化性潰瘍の既往、高用量や複数のNSAID(消炎鎮痛剤:痛み止めの薬)薬の服用、ステロイドやワーファリン薬の併用、高齢者(七十歳以上)の方などは注意が必要です。これらの副作用予防に、プロトンポンプ製剤(胃酸を強力に抑制する胃薬)の有用性が知られていますが、現在保険適応がなく、予防投与できません。

アスピリンは、継続服用することが再発予防に大切ですが、服用後の症状など主治医の先生とよく話されてください。