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救急・災害フォーラム(2008年9月3日掲載)

久木田 一朗・琉大医学部附属病院

「学校にAED普及を」

みなさん、突然ですが、北欧のノルウェーに行ったことはありますか。二年ほど前に心肺蘇生法を研究する国際学会に出席するためノルウェーのスタバンガーというところへ行く機会がありました。

その時一番驚いたことは、歩行者が信号のない横断歩道に近づくと、まだ横断歩道の端に立ってもいないのに車が止まってくれているのです。ノルウェーというとバイキングを連想して怖いイメージもあったのですが、人を思いやる国民性を実感しました。

人を思いやるということでは、突然の心肺停止に陥った人に居合わせた人が心肺蘇生法を施すのは最も崇高な行為ではないでしょうか。いざという時には一般市民が通報と心肺蘇生法を実施し、自動体外式除細動器(AED)を使用することが重要です。

最近では、顔と胸部が付いた人形、練習用の紙性AED、取り扱い方法のDVDなどがセットになった蘇生法訓練用キットを使って、心臓マッサージやAEDの取り扱い方法を学ぶこともできます。

ノルウェーでは、日本でいう小学六年生の六万人がこのキットを使って学んだばかりでなく、すばらしいことにそのキットを子どもたちが家庭に持ち帰って、さらに十四万人の家族に蘇生法を教えたというのです。

県内の学校から蘇生法訓練を希望されることも多いようですが、沖縄県の小中高等学校でのAEDの普及状況をみると、昨年四月の調査で小学校が5%、中学校11%、一方高校は100%でした。高校は昨年、県高等学校安全振興会からの寄贈によって100%となっています。

高校と比べ、いまだに小中学校では突然の心肺停止に対する備えは不十分な状況です。突然の心肺停止はいつ、どこで起きるか分からず、起きた現場からの対処が重要です。野球などのボールが強く胸に当たると起きる心臓震とうは、健康な子どもでも突然死を起こす可能性があります。

そこで今回で四回目となる県民救急・災害フォーラムのテーマは「学校現場にAEDを普及させよう」です。AED体験コーナーや三時間のAED講習を含む心肺蘇生講習、消防・救急車両の展示、吊り上げ救助体験、災害時の炊き出し体験コーナーなども予定しています。

この機会にぜひ九月七日午前十時から沖縄市の県総合運動公園レクリエーションドームで開催されるフォーラムにご家族で参加ください。AED講習会の申し込みは南西医療器、電話098(870)1515。(第4回県民救急・災害フォーラム実行委員会世話人)