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もしもの命綱(下)(2008年7月30日掲載)

小濱守安・県立中部病院

子守るチャイルドシート

車は大人の体格を基準に設計されたものであり、シートベルトやエアバッグも乗車する大人を守るために開発されました。大人はシートベルト着用で事故に遭遇しても、被害を最小限にすることが可能です。しかし車に乗るのは大人だけではなく子どもが乗る機会も多いものです。同乗する子どもを成人の体格に合わせ、調整するための補助装置がチャイルドシートなのです。

二〇〇〇年四月に道路交通法が改正され、六歳未満の幼児を乗せるときのチャイルドシート着用が義務付けられました。中部病院の調査ではチャイルドシート着用は、事故に遭遇した三歳未満児の20%にすぎませんでした。着用していた子どもの44%が受傷しましたが、全員軽症でした。

ところが、着用しなかった子どもの約75%がけがをし、骨折や内臓損傷など多くが重症でした。親のひざに子どもを座らせて抱っこすることをチャイルドバッグと言います。この状態で事故に遭遇すると子どもがエアバッグのようにクッション代わりとなり、親は被害が少なくて済みますが子どもは押しつぶされてしまいます。親がシートベルトを着用し抱っこしていると、事故の衝撃で子どもだけが車内衝突または車外放出され、大けがをしてしまいます。抱っこでは、決して子どもは守れません。

子どもは大人のまねをします。後部座席でシートベルトをしない大人がいると子どもたちもチャイルドシートに座ることを嫌がります。車内を自由に動き回る子どもがドアを開けて転落したり、急停車時にけがをする事故が多発しています。子どもが車内を自由に動き回れないように拘束する装置がチャイルドシートなのです。

見晴らしが良いことや、後ろでは子どもの様子が分かりにくいなどの理由で、助手席にチャイルドシートを装着している車を多数見かけます。助手席は事故の際最も危険な場所であり、膨張したエアバッグで子どもが大けがをした報告もあります。決して助手席に装着しないでください。

推奨される部位は後部座席で後ろ向きです。子どもは体の割に頭が大きく重いので、事故など衝撃があると首が激しく前後に振られ、頭部に外傷を負うことがあります。後ろ向きにすることで事故の衝撃が体全体に分散され、頭部の受傷の危険性が少なくなります。

交通事故はいつ遭遇するか分かりません。あなたが安全運転をしていても、予期せぬ事故に遭遇する可能性があります。万一、事故に遭遇した時にわが子を守る唯一の方法がチャイルドシートです。正しい位置に正しい方法で装着しましょう。