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もしもの命綱(上) (2008年7月23日掲載)

小濱守安・県立中部病院

後部座席もベルト着用を

皆さんは車に同乗する時にシートベルトを着用しますか? 助手席ではほとんどの人が「はい」と答えます。しかし後部座席ではどうでしょうか。

シートベルトが開発されたきっかけは一八九九年英国で、自動車に乗っていた二人が放出され死亡した事故だといわれています。一九二二年レーシングカーに初めてシートベルトが装備され、乗用車への本格的な装備は五五年以後でした。

本邦では六九年運転席、七三年助手席、七五年後部座席にも設置が義務付けられました。七一年に運転席、助手席でのシートベルト着用が努力義務となり、八六年より前席でのシートベルト着用が義務付けられました。やっと今年の六月から、後部座席のシートベルト着用が運転席や助手席と同様に義務化されました。

どうしてシートベルトが必要なのでしょうか。車が事故に遭遇すると、さまざまな衝撃を受けますが、その衝撃から体を守るのがシートベルトなのです。

走行中の車が交通事故に遭遇すると、瞬時に車は停止します。シートベルトで体をシートに固定していると、人の体も瞬時に停止し、車内衝突や車外放出が起こりません。しかしシートベルトで体をシートに固定していないと、車は停止しても、車の中の人は慣性の法則により、それまでの速度を維持し続けようとする力が働き、前方に激しく投げ出され車内に激突したり車外に放出されてしまいます。

シートベルト着用なしで時速五十`で壁に衝突した場合、車内の乗員は高さ十b(三階建てビルの屋上相当)からコンクリートの地面にたたき付けられたのと同じ程度の衝撃を受けるといわれています。このような衝撃から乗員を守るためにシートベルトが義務化されたのです。

車に乗っていて交通事故に遭遇したとき、助手席や運転席はシートベルトとエアバッグで保護する手段がとられています。運転席や助手席でシートベルトをしない大人はごく少数と思われます。しかし後部座席はどうでしょうか。警察庁の調査では後部座席でシートベルトを装着しているのは約7%のみでした。

交通事故は運転席だけの問題ではないのです。むしろシートベルトをしていない後部座席の乗員が事故の衝撃で前方に激しく衝突し、その結果シートベルトやエアバッグで保護されている乗員に傷害を与えることも明らかになっています。

後部座席で乗員がシートベルトを着用することは万が一の事故に遭遇しても、乗員全員が最小限の被害で済むことにつながります。後部座席でもシートベルトを着用しましょう。